Open App

本格的に暑くなる、ひとつ手前。
梅雨時期の、僅かな晴れの平日。
会いたくて来ちゃった、と笑う目元には隠せない疲れ。
少し前なら《疲れてるなら来なきゃいいのに》なんて僕は返すのだろう。
きっと彼もそう思っていたようで。
すぐ帰るよ、と困ったように眉根が下がっている。
きゅう、とあなたと出会って存在を知った臓器が小さく鳴く。
衝動に躊躇わず、一歩半。前に。

僕もです、と小さく意思表示。
本音を言うなら、《僕も会いたかったです》と返したかったけれど、言えず、恥ずかしさから抱きついてみたりして。 
胴へと回す腕まで震えるような衝撃。
つい、と目線だけ動かせば、首はおろか、耳まで『繊細な花』のように色付いている。
さらに進めれば、口元を押さえ、何やら呟いている。
出会ってからの年月で知り得た限り、それはどうしても聞きたくて、身を捩るが同じように抱きつかれ、首すらも動かせない。
ぐりぐりと痛いくらいに肩口へ額を擦る様が、本当に今目の前にいるのだと知らせてくれる。
何を遠慮していたのだろう。
きっと似た者同士。
少しばかり先行くあなたが示してくれた通り。

恋しくなれば、会いに行けばいいだけなのに。

6/25/2024, 2:31:42 PM