予報よりも強く窓を打つ雨に集中なんて出来るわけもなくて、手を止めてただぼんやりと眺めていた。
こういう雨の日はどう過ごすのだろうか。
思い馳せるひとはいま、なにをしているのだろう。
濡れていないだろうか。
濡れても喜んで飛び出すようなひとだから。
もしかしたら、
誰かの来訪を告げるインターホン。
もしかして。
部屋を見渡し、服を確認し、扉の外へ。
ああ、どうか。
『降り止まない雨』がこのまま続けばいいのに、なんて。
「もう、来ない」
何度めかの決意はいつもぼろぼろと崩れていく。
そんな薄っぺらな想いじゃ、そばにいることすら不釣り合いなのに。
「…ん、」
諦めをにじませたまま、眉を下げて微笑むのもまだすきのに。
身勝手なこころをぶつける幼い自分を嗜めるどころか、巣立ちを喜ぶように。
「おまえがそう望むなら」
許せない許せない許せない。
そういうところがきらいだった。
あの日はそのまま背を向けて。
まるで自分だけが被害者のように、憎悪吐き出して。
嘘をまとった鎧で逃げ出した。
『あの頃の私へ』
待っているだけじゃだめなんだ。
想いはちゃんと“言葉”にして。
よほどの用がない限り、閉めきられた部屋。
湿気ったカーテンの隙間から差し込む光に舞う埃。
たった扉ひとつ、仕切られただけなのに声が遠く聞こえる。
腰かけた机に覆いかぶさられて。
心音が聞こえてしまうような、そんな距離。
かち合う双眸。
少しだけためらうようなゆれる淡い色。
『逃れられない』
ふれた手のひらの熱さを知っている。
ただ何気なく、隣あった指先のそのむこう。
季節より先行く汗ばんで。
つぎは『また明日』
かろん、ところがる舌のうえ。
ぶつかる歯と与えれた飴玉の甘さの分だけのやさしさ。
おかわり、ねだって。
飴玉くだいて無かったことにして。
からっぽの口を開ける。
ふたつめの飴玉ころがして。
さっきのほうが甘かったとくちびるとがらせた。
だいじにしなよ。
与えるたびに言葉も添えて。
想いも『透明』な分、隠さず、伝わればいいのに。