hikari

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12/12/2024, 3:24:48 AM

なんでもないフリ

母の愛をもらえなかった私は、人から愛されるのだろうか。
描かれるような一般的な子供時代を送れなかった私は、うまく生きて行けるのだろうか。
よく、わからなかった。

ただ、SNSでなんの根拠もない一個人の人間がつぶやく「絶対論」に私はひたすら誑かされていた。生い立ちも違えば、性別も違うかもしれないのに、大きな主語に翻弄され、人が恐ろしく感じるほどに、私の精神は未熟していた。また、その基盤は非常に脆く、その脆さこそが、SNSで述べられた一部の大きな声を証明してしまうようだった。

そこには、こう書かれてあった。
「昔から、まともに育てられてない子供は、生きてゆくのが難しいのよ。」
ズドン、と心が重くなってゆくのを感じる。本当にそうだろうか?と反発する心の許容量がなければ、どんどん暗闇の中に落ちてゆく。書き手の一つの感情で変わるかもしれない浅はかな主張なのに、私の胸には嫌というほど刺さる。

それは現実でも起きた。
「大学までに、恋愛してないと、どこかおかしいのよ」
神楽坂の洒落た酒場で、セレクトショップの店員を意識したような同級生が言った。片耳のピアスは、その顔を避けようとして初めて認識した。
私は口に含んだビールを吐き出したくなった。

どちらも、根拠のない話だ。
ただの本人の主観であるのに、本人はそれが当然かのように言う。意見を述べることは問題ではないが、マイナスな要素を断定的に述べる人間は、果たして、何を目的にしているのだろうか。

しばらくしたある日、
YouTubeのショート動画が流れてきた。
かの有名な俳優の生い立ちだった。
過酷なわかりにくい両親からの愛情に耐え、兄弟を養いながら現在の地位までいたった生い立ちだった。
私は、彼のことをとても好きになった。
そこのコメントには、こう書かれてあった。
「やっぱり、こういう苦労をしてきた人は、不謹慎だけど魅力的よね」

私はこのコメントを見た時、どうしてそのように考えられなかった時に、この動画が表示されなかったのだろうかと思った。私は、私が考えていることが正しいと思いたいがために、その証拠集めをひたすら現実でおこなっているのではないかと思ってしまうほどだった。

何が正解か、わからない。
おそらく正解などない。
ただ、一つの事象からなる複数の問題によって積み上げられてきた過去が、これからの一生を全て決めるというのは間違っている。
もしそれが本当ならば、もっとわかりやすく証明されていて、もっとわかりやすく教育機関などで言われているはずだ。そんなAならばBであるような事象ならば、国が政策をとらなければならない。

だから、私は、自分の頭と心に優しさがひとつでも残っている時は、私はたった一つの負の事象からこれからのことを決めつけたくはない。人はなるようになる、それは良い方向に変わってゆくという微かな希望だけは、死ぬ間際も忘れたくない。変わっていけることを喜べるようになれる。そんな浅はかな理想論を言い続けていたい。その未来を作る一歩目は、恐怖に打ち勝つことでも勇気を振り絞ることでもなくて、今ある自分のまま平然と生きていくことのような気がしている。

12/10/2024, 3:51:43 PM

仲間

友人より仲間が欲しい。
付かず離れず、一つ目的に集結する人間関係。いい意味で腹八分目な関係性ができる人間関係のジャンルこそ、「仲間」にあるのではないか。
友人ほど脆くなく、仕事仲間ほど希薄ではないところが魅力だと思うのだ。
友人なんてものは、心の癒しになるときもあればステージが変われば弱みを握った厄介なポジションになる時もある。私は友人というものは、3-4年おきに人間関係をガラリと変えるのが精神衛生上とても良いと感じている。
今、自分が達成したい目標に共に自己研鑽し合える仲間がほしい。

12/9/2024, 4:05:46 PM

手を繋いで

私はいつだって都合がいいから、神様に祈る。
私の寿命、5年渡すから、私の飼い猫の一生を長生きさせてください。5年以上でもいいなら、もっと。

私の家の猫は、心臓が一回り小さく産まれてきた。
大型猫のメインクーンなのに、一般的な猫よりも小さい。小さな心臓はトクトクと早く鳴り続けている。
私はその心臓の近くに耳を置いて聞く。
もし、心臓が鳴る回数が決まっているならば、
できるだけ、できるだけ、ゆっくり動いてほしい。
その最後の回数に辿り着くまで、できるだけ、ゆっくり。

お互い言語も違うから、何を思っているのかわからない。だけど、いつも鈍臭くてビビリなくせに、悲しい時はいつも、体の一部をぴたりとくっつけてそばにいてくれる。たった3キロ弱しかないその重さに、私は幾度となく救われてきた。

心地よさそうに伸ばす小さな肉球のついた手を、指先で触る。再び心臓の音を確かめるように、耳を近づける。

神様、私の寿命あげるから、もう少し一緒に居させてください。

トントントンと音を鳴らす心臓とその体温を、私は忘れぬように、確かめるように、精一杯感じた。そして、小さな肉球に、私の命が移るように、叶わぬ願いを込めて、握った。

12/9/2024, 11:46:47 AM

ありがとう、ごめんね

12/7/2024, 2:28:17 PM

部屋の片隅で

人生のどこかで躓くであろうことは、わかっていた。
順風満帆に人生は進んでいかないのだという常識的な話ではなく、自分は「そちら側」の人間ではないということを私は理解していたのだ。
金か権力か、保護者の加護を受けて、嫌味のないまっすぐな道を歩んでいる同級生を見るたびに、私はそちらの道にはしたくてもできない不器用さを抱えていることを知っていた。たとえ周りが羨むような環境であったとしても、私は自分が抱えている内面を治さないかぎり、世の中から炙り出されるのではないかということを感じ取っていた。
身長や体重は、みごとに日本の平均値ジャストであり、また学業も人並みだった。可もなく不可もなく、というあだ名があれば私が1番似合っているに違いない。極め付けに、「あの人に似てる…!」という前置きに期待させられて、いつも言われるのは、幼稚園の同級生だとか、小学校の友達だとか、従姉妹だとか、「しらねぇよ」という感想以外何も言えないようなことをよく言われてきた。顔まで日本の平均値ともなれば、もはや外国人向けのハンドブックにでも日本人の主な例として載せてほしい。

そんな何にも特別ではない私が、おおよそのレールから外れて、ある種の「特別」になってしまったのはいつからだろうか。私は今日も部屋の片隅で、過去の自分に土下座している。

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