ゆらりゆらりと。
自分のなかに確かにあるもの。
その日の心模様で、ろうそくのように。ある時は暖炉のように。
ぽうっと灯ったあたたかいそれは、こころ、とよぶこともある。
ありがとう。
だいすき。
楽しいね。
嬉しかった。
優しい誰かの言葉が、ひかりに力をくれる。
笑顔が、感謝が。いかに大切かを。
身をもって知る瞬間。
わたしも、あなたの薪になれますように。
「心の灯火」
今日の感情。曇り時々雨。
理不尽が嫌だった。ないがしろにされた自分がかなしい。
一日だけで、たくさんのもやもやが溜まる。
じゃあもういっそ、吐き出してしまおう。
誰かに愚痴るのもいいけれど。
いっぱいになる前に、くしゃくしゃでいいから。
こころの、お掃除をしよう。
そしていつか振り返って、こんな日もあったと笑えるように。
飛行機にして飛ばして。
振り返らず、その時まで前へ。
「開けないLINE」
ふと目覚めた夜中の3時。
朝というのか、夜というのか。
ぼんやりと、些細な事を考えていたら眠気がどこかになりを潜めていた。
寝ないと仕事中に眠くなるよなぁ。
見上げる天井が徐々に光を招き入れていた。
時折聞こえるバイクや車の音。
いま、この瞬間にも、頑張る誰かがいる。
そっとカーテンから覗き見た景色は、しん、と静かで、特別な世界のようだ。
この静寂を、閉じ込めておきたい。
ゆっくりと顔を出した太陽は、神々しくて。
新しい自分になったような誇らしさがあった。
かわっていくのは、僕も同じだ。
「不完全な僕」
抱きしめるとふわりと香る。
あまくて、せつなくなるようなムスク。
思わず顔をうずめた。
ベルガモットが胸いっぱいに広がって、苦しくなるほど、いとおしい。
それぞれの体温で変わるなら、これはあなただけの特別だ。
どうしようもなく、息が止まるほど。
あなたのすべてが、香りに記憶されていく。
もっと強く
細胞に刻んで。
「香水」
わたしに花をくれたのは、あなたがはじめてだった。
幼稚園の帰り道、道端に咲く花が帰宅したテーブルに置いてあった。
うれしかった。
ただ、ただ言葉に出来なかった。
中学生になったあなたは、私に似合うだろうとほんのりと色づく、オレンジのリップクリームを買ってきた。
絶対似合うと思って、とか、かっこいい綺麗なの目指してるって言ってたから、とわくわくするあなたに、気づいたら微笑んでいた。
なめらかに、薄い唇をなぞったリップクリームは。
私の一番の色になった。
いいねこれすごく、と言う私に、満足気に息子は笑った。
これは私の、幸せの色だ。
永遠に私を導く、女神の後光だ。
「言葉はいらない、ただ……」