甘々にすっ転べ

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3/30/2024, 10:43:15 AM

#皿の中の味


ドブの味のするスープの具合はどうだ?
お口に合ったか。

とてつもなく絶望し、しかし自己愛を捨てきれず、
投げ捨てた筈の空の皿を見下していた筈だが?

ぁあ?
腹の虫が鳴るのを放っておいただろう?

まぁ、そこの皿に入っていた飯が気に食わなかったのは分かる。
大いに理解しよう。
その反抗心たるや天晴れだ。
俺もそうだった。

さぁて。
どんな味だ。
お前が初めて自分の手で掴み掛かった皿のそいつは。

あぁー俺の時は、トマトの味がした。
塩も胡椒も何もない、トマトを潰したスープだったなぁー。

「お前は?Mr.」

「... ドブの味だろ。」

「そうか。お前はもっと美味いものを食えよ。」


さて、では次に行こう。

「あんたは?Ms.」

あんたが味わった
希望の味を、俺に教えてくれないか?



2/21/2024, 11:24:20 AM

#コップの水に泡


躓いたのはクソヤロウのせいで
立ち上がらないのは私のせい

なのでプライドの高い私は立ち上がらずには居れず
コンチクショウと奥歯で唸り拳を握ってコンクリを踏んだ

それを何度も何度も繰り返して漸く
もういいや と鈍色のものが目に付くようになった時

ある話を思い出した。

満タンになったコップの水の話だ。
もう縁スレスレまで水は入っていて
少しでも動かせば溢れそうになっている。

無理をするな と言う話だ。

馬鹿馬鹿しい。

そんな物で制御出来るなら私はとっくにサボる事を覚えていた。
上手な息の吐き方も継ぎ方も覚えたさ。

だが実際には、注がれるだけ水を浴び続けた。
それがコップにあるべき姿だ。

だからもう良いだろ。
満タンのコップを捨ててしまえと思った。
新しいコップにしろ。
私のコップはチープだった。これで終いだ。

だけど。

誰かが言ったんだ。

ーーそれ素敵ね。

別にこんな物と思った私物は、やはり好きで買い求めた物で。色合いが好ましかっただけだ。

ーーありがとう。

そんな大層な事はしていない。誰にでも出来る事だ。
只、今は私の方が手が空いていたから、そうしただけだ。
その方が、効率が良いからそうしただけだった。

コップに水を入れる。
勝手に入って行くのが分かる。
私ではどうしようもない事だが、私には水以外を入れる指が有る。

不器用だが、まぁなんとかなっている。

腹の立つばかりのコップの水に

クエン酸を少し入れ 溶かす
次は重曹を同量入れ 溶かす 以上だ。

さぁ、飲んでみろクソヤロウ。

さぁ、足掻いてみろ私よ。


これは只の水じゃないぞ。

2/13/2024, 12:41:19 PM

愛の言葉が浮かばないので。

ーーー

例えば、言葉に出来ないけれど確かにこの胸の内を滾らせてくれるような文字を書く君が。
筆を折ってしまいそうになるのなら。

私は先ず
そのペンとそれを握る中指の付け根に口付けたい。
それでも理解出来ないと言うのなら。
次は手の甲と、手首の背を。
それから失礼だけど、手を取ってペンを握り込む親指の付け根にもキスがしたい。

まだ分からない?

では、噛んでみようか。
小さく軽く、君の大事な右手にチクチクと歯が当たる感触はどうだろう。

けれど、理解してほしい。
言語化出来ない僕の代わりに、滾らせてくれたこの熱意で以て。
こう応える以外の術が僕には無いのだから。

それから僕は、君の正座を斜め後ろから見るのが好きなんだ。
この丸い肩と緩やかな腹から、喉を伝い耳や目と脳みそで君が紡ぐ言葉が好きだ。

だから例えば、君が嘘でも僕を"きらい"なんて言おう物なら。
僕こそ正座をして、一体僕の何をきらいだと感じたのか聞かせて欲しい。
僕と君とでは得意な事が違うから、君の得意を上手に出来るように僕に教えて欲しい。

君は違和感に敏感だから、僕よりずっと色んな物が見える。
僕はてんで苦手だから。
服の前後が違っていてもまるで気付かない。
いつも君が教えてくれる。
だから、きらいな理由もいつもの様に教えて欲しい。

だけど、もし本当にそれが嘘なら。
僕は喜んで、騙されたぁと言ってゲラゲラ笑い床を転げ回る。
ついでにお風呂の掃除当番も僕がしよう。
君の手がこれ以上凍えてしまうのは、良くない。

1/9/2024, 2:42:57 PM

#三日月

むしゃっ。

齧り付いたまん丸の柏餅

もちもちの食感を

ゴクり


「はぁ... ... うまぁ。」


もう一個齧り付いて気付く。

「お前は美味そうな三日月だ。」

良いな。
美味い餅は美味そうな三日月にもなれる。

さておき俺は。
飯食ってねぇけど、まぁ。
コレ食ったから良いだろ。

さ、寝るか。

今日はもう何もしたくねぇ。

1/7/2024, 3:58:14 PM

#雪

「そこ、寒いっしょ。」

「君がコーヒーを持って来てくれるのを待ってたんだよ。」

「それはそれは。お待たせした?」

「少しね。」

コーヒーを側の椅子に置くと、手を握り合った。

「ふぅん、可哀想に。君の指が俺のせいで冷たくなってる。」

「可哀想って言う割に顔が笑ってるようだけど。」

とりわけ器用なソイツは指先でチラチラ振る雪の結晶を一欠片指先にピシリと留めた。

「それ素敵。」

「ニンゲンには出来ない芸当っしょ。」

「だけどコーヒーが冷めそう。」

「おっと。それじゃ中へ戻らないと。」

パキン、と指先の結晶を弾いてコーヒーのトレイを持つ。
反対の手で人間の妻の手を握り部屋へ戻って行く。


此処は魔王城

今は彼の気まぐれで雪を降らせている。
彼の妻が故郷の季節を好むからだ。

「可愛いひと。」

妻もそんな魔王を気に入ってる。

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