#雪
「そこ、寒いっしょ。」
「君がコーヒーを持って来てくれるのを待ってたんだよ。」
「それはそれは。お待たせした?」
「少しね。」
コーヒーを側の椅子に置くと、手を握り合った。
「ふぅん、可哀想に。君の指が俺のせいで冷たくなってる。」
「可哀想って言う割に顔が笑ってるようだけど。」
とりわけ器用なソイツは指先でチラチラ振る雪の結晶を一欠片指先にピシリと留めた。
「それ素敵。」
「ニンゲンには出来ない芸当っしょ。」
「だけどコーヒーが冷めそう。」
「おっと。それじゃ中へ戻らないと。」
パキン、と指先の結晶を弾いてコーヒーのトレイを持つ。
反対の手で人間の妻の手を握り部屋へ戻って行く。
此処は魔王城
今は彼の気まぐれで雪を降らせている。
彼の妻が故郷の季節を好むからだ。
「可愛いひと。」
妻もそんな魔王を気に入ってる。
1/7/2024, 3:58:14 PM