甘々にすっ転べ

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#コップの水に泡


躓いたのはクソヤロウのせいで
立ち上がらないのは私のせい

なのでプライドの高い私は立ち上がらずには居れず
コンチクショウと奥歯で唸り拳を握ってコンクリを踏んだ

それを何度も何度も繰り返して漸く
もういいや と鈍色のものが目に付くようになった時

ある話を思い出した。

満タンになったコップの水の話だ。
もう縁スレスレまで水は入っていて
少しでも動かせば溢れそうになっている。

無理をするな と言う話だ。

馬鹿馬鹿しい。

そんな物で制御出来るなら私はとっくにサボる事を覚えていた。
上手な息の吐き方も継ぎ方も覚えたさ。

だが実際には、注がれるだけ水を浴び続けた。
それがコップにあるべき姿だ。

だからもう良いだろ。
満タンのコップを捨ててしまえと思った。
新しいコップにしろ。
私のコップはチープだった。これで終いだ。

だけど。

誰かが言ったんだ。

ーーそれ素敵ね。

別にこんな物と思った私物は、やはり好きで買い求めた物で。色合いが好ましかっただけだ。

ーーありがとう。

そんな大層な事はしていない。誰にでも出来る事だ。
只、今は私の方が手が空いていたから、そうしただけだ。
その方が、効率が良いからそうしただけだった。

コップに水を入れる。
勝手に入って行くのが分かる。
私ではどうしようもない事だが、私には水以外を入れる指が有る。

不器用だが、まぁなんとかなっている。

腹の立つばかりのコップの水に

クエン酸を少し入れ 溶かす
次は重曹を同量入れ 溶かす 以上だ。

さぁ、飲んでみろクソヤロウ。

さぁ、足掻いてみろ私よ。


これは只の水じゃないぞ。

2/21/2024, 11:24:20 AM