#眠れないほど
冴え切った頭と血走った様な目で
テレビが反射する壁を睨み付け息を詰める。
うっかり見てしまった。
クリスマスプレゼント 彼氏 の検索下部に映る、
該当商品。
なんっだソレ。
筋肉ムキムキのマグカップと、
カートに何かが1つ入っているマーク。
まさかソレがクリスマスプレゼントじゃないだろうな。
盗み見た様なものだから
聞くに聞けないまま寝室へ向かった彼女を見送る。
俺は明日休みだから。
弁当と朝飯の用意を済ませる間も気になってしょうがない。
更には、美味いはずの缶の酒を煽っても頭にはムキムキマグカップが浮かぶ。
「せっかくの休日なんだけどっ、!?」
俺は、特にこだわりがあるわけじゃ無いが。
彼女がやってくれるなら
一度は俺だけの可愛いサンタに会いたい。
ベタベタな妄想を働かせる俺を殴ってくれても良い。
ちょっとだけでも、見たいっ、
勿論。
彼女がくれるなら何でも嬉しい。
但し。ちょっとソレは待って欲しいな。
どうする。
言うべきか言わざるべきか。
「... ... それが問題だ。」
盗み見たマグカップが気に入らないから
クリスマスプレゼントは一緒に選ぼうって言えば良いのか。
そもそも盗み見た様な状況なのが不味い上に、
プレゼントに文句まで付けるのか俺は。
クソーーッ。
笑えるバラエティが流れてる筈なのに
内容が全く入ってこない。
いっそ筋肉マグカップも思い出に残る。
面白いじゃねーか、と言う気持ちも出て来た。
なぁ。
俺は一体どうすればいい????
このままじゃ今日は眠れないぞ、
#夢と現実
夢は幾つもあった
J・Kローリングの様な世界に飛び込みたかったし
警察官にもなりたかった
だがしかし
私は至って平凡で
自分を他人より少しばかり賢いと思っている
ただの平和主義者だった。
物語の様に
悪は分かりやすく悪では無かったし
努力だけではどうにもならない事がある事も知ると
私は瞬く間に平凡の一粒へと成った。
好戦的な他人は死に物狂いで働いている。
それを横目に
細々と生きていくのがやっとだった。
羨ましい限りだ
そして妬ましい
諭吉の数が私を惨めにする
けれど
私は健やかであった
今も諭吉の数を数えているが
死んだ様な目をして
神経をすり減らし貼り付けた笑顔で
いらっしゃいませ
とは言っていない。
ただほんの少し、
他人が羨ましいだけだ。
彼らは私より良くやっている。
何か良いことが彼らにもあれば良いのに。
暗くなる前に彼女を門扉の前まで送り届ける。
そうすると取れる行動はもう他には無い。
釣書だけでは何も分から無かった。
写真は尚更、作り物の様な顔と姿だった。
それが実際会えば落ちるのは一瞬だった。
小さい背中、白い指、伏せ目がちな目。
「今度は、外で会いませんか」
みっともなく上擦った声だった。
しくじったかと思っていたが。
相手方から頂いた手紙には思いがけない返事を貰えた。
だからこそ
今日は彼女が楽しめる様に尽くしたかった。
だからこそ
彼女が門扉を潜る前に紡ぐであろう言葉を聞きたく無かった。
それなら
他に何と言えば良いのだろうかと考えて
「また会ってくれないだろうか。」
今度は上擦らなかった。
だが、気障だったろうか。
私は心配性だとよく上司に言われる。
それでこそ任せられる仕事だと仰ってくださるが、これは仕事では無く。
私、個人の問題だ。
「また、会いたいのです。いけませんか。」
もっと他に言い換えれば彼女も私も傷付かずに済む事は分かっているが。
私は嘘は吐かないと決めているのです。
真摯であるべきと決めて生きているので
こう愚かな聞き方をしてしまうのです。
申し訳ない。
だから断られたら潔く身を引く覚悟だ。
出来ていなくともそうすべきだ。
それが男だ。
「いいえ。」
「ぇ。」
「いけなく、ないと思います。」
「は。いけなく、ない、と言う事は。私とまた会ってくださると言う意味でしょうか。」
「今、お決めになりますか。あっ、の。お手紙だとつい郵便屋さんがここを通る度に気になってしまって、家事どころではなくなってしまうので、」
私は舌を噛んで頬が緩みそうになるのを耐えた。
可愛らしい人だ。
あまりにいじらしい事を言う。
「では、今度の」
私達は暗くなるまで門扉の前で話し込んだ。
せっかく早い内に街から戻ったと言うのに、これではご家族に面目が立たない、が。
「では、また。」
「えぇ、また。」
さよならは言わないで居た。
何と言っても新しい約束が出来たのだから。
コインを投げて落ちる瞬間、
その寸前まで表か裏かを選べるとしたら。
表なら
なにをする?
裏なら
このまま堕ちて行け
バケツをひっくり返した様に泣き
泥の様に眠り
落ち着いた頃、落ちたコインを拾い表にすればいい。
さぁ。
表ならなにをする。
散歩か菓子かパンかみかんにこたつにチョコレート。
さぁ。
コインが落ちる3秒前。
どっちに賭ける。
#光と闇の狭間
#距離
距離を取りなさいと友は言う
それなのに私はあっという間に線を飛び越えてしまう。
一生懸命で不器用で幾つになっても周囲の人間は皆、優しい人達だと思ってるバカな私。
こうして泣く度に心優しい友が
だから言ったじゃ無いかって肩をぶつけてくる。
人間は気に入った人間にしか優しくしない生き物だし、そもそも"気に入った"の定義があんたとは違うんだよと慰めてくれる。
それでも、優しい部分を見てしまったら。
だって、他人に優しくするのって凄いことだよ。
そう言って鼻をかむ。
あんたはすぐにそうやって誰かを気に入っては泣くんじゃないか。
優し過ぎるんだよ。
人間はもっと自分勝手だ。
あんたはそうじゃないだろうけど、
摘んだ薔薇を笑って渡すのは仕事でも、棘を取るかどうかは贈り手の自由なんだよ。
あんたはきちんと棘を全部隅々まで取り払ってしまうんだろうけどね。
じゃあ私の友はなんで私に優しいの。
「あんたがくれる薔薇が好きだからだよ。」