甘々にすっ転べ

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12/1/2023, 4:12:48 AM

「そんな事、泣かなくて良い!」

あんたは悪く無い!
あんたは努力しただろ
あんたは頑張った筈だ
途中で投げ出しもせずどうしようか考えて、最善を尽くした筈だ。
あんたはめげなかった

あーすみません、わかりませんでしたー

そう言えば良い
言わなかったのはやってみようとして頑張ったからだ。
やらずに放っておくよりずっと良い

放って置けなかった
それだけで偉いだろ。

時間通りに終わらなかった?
明日やれば良いさ。
駄目なら誰かの手を借りると良い。

それも駄目ならもう君の手には負えないと言う事だ。
出来るわけがない。
君の容量はもう超えている。
それなのにまだ放り出さないのか?だろ?

泣かなくて良い。

どうみても、君はよくやってるじゃないか。

#泣かないで

11/29/2023, 12:13:23 PM



#冬の始まり


「出来たぞ。」


ザクザク切った具材を鍋に入れて煮る、
肉団子と水餃子、豆腐、水菜、白菜、マロニー。

「キムチ鍋ーっ、!」

俺は豚肉派なんだけどな。
肉団子と水餃子に決まってる、と言われて食べてみたら言わずもがな旨かった。

「貸して貸して!」

こいつは何でか鍋を張り切って食う。

「じゃーんっ!」

機嫌良さそうに笑って皿を戻してくる。
旨そうな鍋が器に盛られてる。
いつも見た目なんか気にしない癖に。

なんでか鍋の時は俺の皿を取り上げて、こうして綺麗に盛って渡してくる。

実家の犬がこんなだった。
バカかってくらい可愛い。
タレ目で。元気でとにかくよく寝る。


「これやると冬が来たなって思うんだよねー。どう?私が注ぐと美味しいっしょ。」

「はいはい。旨いな。」


〆まだ続いた。

11/28/2023, 12:01:06 PM

「ちょっと、寝よ」

うちに帰るや否やヒーターを付け、目の前に座る。
風を送る奴ではなく、もっと原始的な熱いやつ。
しかもこいつはオンとオフしかない。

温度調整がない金網で仕切ってある当たったら火傷するちょっと危ないやつだ。
その代わりマッハで点く。

「はぁぁーー生き返るぅぅっ。」

冷たい指先がジンジンして来た所でコートを脱ぐ。
だいぶあったまったきた。
ここからが勝負。

スタッと立って足元のカーペットの電源をオン。
キッチンへ向かいヤカンでお湯を沸かすと、そのまま自室で部屋着にチェンジ。

化粧も落とす!
仕事を連想させるものは今!ここで!
全部削ぎ落とす!

お湯が沸く頃には明日着る服の準備も復習も終えて。
ダッシュで行けばあったかいリビングへおかえり。

いそいそとマグに紅茶のティーパックとお湯を注いでヒーターの前へ。
じわっと深い紅が広がっていくのを眺めていく。

漸くひとくち飲むと、これで今日1日が終わった気がする。
あとは帰りを待って一緒に夕飯を作る。

「ちょっと、熱いな。」

オンとオフしかないヒーターのスイッチを回す。

ヒーターの赤がじゅわっと消えていく。
釣られて意識も傾きそうになる。

「まじちょっと、寝よ。」


言うてもまだカーペットが温いから大丈夫だろ。
寒くなったら起きれば良い。
このまま寝ても多分、怒られない。
カーペットはちゃんと付いてるもん。


トントントン、と包丁の音がする。
ぱちっと目が覚めた。だいぶ寝こけたらしい。
部屋は寒いどころか暖かくて、ふかふかで柔らかい何かが手元に収まってる。

「ふふっ、」

これ、テディーベアだ。
買うつもりもなく家具屋で抱きしめてみたら、あまりのフィット感に手放せなくなったクマだ。
恥ずかしかったけど年甲斐もなくねだってカートに乗せた戦利品だ。

それに、毛布まで掛かってる。

また文句を言って掛けてくれたのだろうか。

起きて夕飯の用意を手伝わないといけないのに。
あともうちょっとだけ、このぬくぬくを味わっていて良いだろうか。

「おーーい、起きてるだろ。バレてるぞ。」


#終わらせないで
〆前のと続けてみた。

11/27/2023, 11:24:56 AM

俺は何とも無いが、少し低いか。
ソファへ行きブランケットを引っ張り、ぬくぬくのカーペットにくっついた背中に掛ける。

寒いと丸くなって耐える癖がある。
カーペットなんかじゃ風邪を引くだろう。

前髪が目に掛かってる。
顔が見たい。
指先が青みがかった黒髪を払うと、触れた額が冷たかった。

「やっぱり寒いんじゃないか。」

腹が立つ。
もっと大事にしろと言うのに
いつまでも理解しない。

今度は寝室まで行き毛布を引っ張ってくる。
嫌がらせでテディーベアも握って来た。
これを毛布と一緒に腹に突っ込んで、すぴすぴ眠る腑抜けた顔を写真に撮る。

俺のスマホの壁紙にした。


「ふっ、腹が立つのに可愛いな。」


#愛情

11/22/2023, 11:03:22 AM

#夫婦

夢も希望も無いなら
せめてこのまま"今"が続けと思った。

秋風が窓を叩くのに、彼女は気にした風もなく私の家にいつの間にか居着いた猫を撫でている。

男やもめの本と書き損じた原稿だらけの部屋を、彼女は片付けに通ってくれている。

「今度、カフェーにでも行きませんか。」

彼女はただ嬉しそうに
はい、と答えてくれた。

デェトと言うものに浮かれ、その日は四六時中彼女を見ていた。
普段見慣れない洋装だった事もある。

それから活動写真を見に行こうと、歩く最中。
口が勝手に開いたのだ。

「月が綺麗ですね。」

彼女は、あっと手を自分の髪へ伸ばした。
洋装に似合う三日月の髪留めを私が褒めたと思ったのだ。

「ありがとうございます。」

伝わらなかったのだろう。
私も大概ロマンチストだったのだ。
浮かれて舞い上がる滑稽な男だ。

そう、思っていたのに。


「何時仰ってくださるのかと、お待ちしておりました。」

俯いてきゅっと口の端を結ぶ彼女は、私の幻だろうか。

「漱石様の本は私も読みました。」

「そ、そうか!」

私の気のせいではなかった。
私はそうだ。
活動写真はまたにして、大慌てで簪を見に行こうと誘った。
滅多に無い洋装をした彼女にだ。
その慌てっぷりはまたもや滑稽だろうが、彼女が嬉しそうに笑ったのでそれで良いことにする。

「櫛も、買って良いか。」

「あの、気が早過ぎます、」

「だが、君に似合う。」

ぱしっと痛くも無い指が私の腕を叩く。

「では、私にはタイを選んでくれないか。」


彼女がまた嬉しそうに笑う。

嗚呼

夢も希望も出来たじゃないか。

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