#キャンドル
ここ2週間、様子が怪しかった。
ちょっと反応が遅かったり
パチパチっと二度反応したりしてた。
それが遂に寿命が来たらしい。
「まじかぁー。」
蛍光灯が遂にうんともすんとも言わなくなった。
困ったな。
真っ暗じゃ落ち着かない。
そういえばと思い出して、職場のお姉さん達から貰ったアロマキャンドルを探す。
「あぁ、火。どうするかなぁ。」
ライターとかマッチとか私が持つには危ない物は、この家には無い。
そそっかしいから。避けないと。
結果、ガスコンロで点けてみた。
はらはらしたわ。ひーひーだわ。
マジ危ないから簡単に試すべからずな。
けど、こうして眺めるのは良いな。
忙殺された1日にも意味が有った気がしてくる。
普段液晶の光ばっか浴びてるから。
たまには眼精疲労を労ってやらないとなぁ。
「ふっ、これ良い匂いする。」
しょうがなかった。
同い年だし親も似た様な歳だから。
二人して親が体を壊したから。
同棲を解消して3ヶ月。
今それぞれの実家に戻っている。
1日1回のメッセージを残すだけで精一杯の日々。
息を吸うだけで苦しい家でもう3ヶ月も過ごしてる。
私達が帰りたいのはこんな家じゃないんだよ。
持って来た荷物を幾ら元通りに並べても
少しも居心地が良くないんだ。
匂いももう分からないんだ。
この家の洗剤は好きじゃない。
でも1日1個は良い事があって。
それをメッセージに残す。
どうかお互いまだくたばるには早いんだよ。
そう願って祈って胸の中で叫んでる。
#はなればなれ
#秋風
ま、待ってよ
まだモンブラン食べてない
読書だってまだ一冊もしてないんだっ、
運動は、まぁあれだ。
仕事してるからそれで間に合ってる筈だ。
柿、秋刀魚、梨、ぶどう、サツマイモ
あぁっ、!
キムチ鍋だってまだ食べてないんだが!?
冬が来る前に、もう少し秋を味わわせて
まだ位置情報サービスなんか無かった時代
ケータイの地図を見ながら
電車を乗り継いで最寄駅から待合せ場所へと向かう。
その間もメールが飛んできて道に迷ってないか相談し合っていた。
掲示板で出会ったそのひとは
やはり話しやすく柔らかい雰囲気を纏っていた。
紅茶とケーキを頼んで沢山しゃべった。
「少し寒いね。」
と言うのに
吹きっ晒しの公園でココアを買ってまた話し込んだ。
少し早めの夕食を選んで、指先がさりっと当たって不愉快じゃない事に気付いたら店を出て歩き出した。
コートを脱ぐのを手伝ってくれて、
それは体温が感じられるくらい、
息が触れ合うくらい近くて。
無意識に引き合って呼吸を止めた所で
二人してふはっ、と笑い合ってしまった。
気も合った
指先の違和感も無かったのに
そこから先に進むには二人して何かが足りなかった。
お互いに何が足りないのか分からないまま
「ごめんね」って笑って。
でも人肌だけは寄り合って眠った。
「また会いましょう」
「うん。また会おう。」
連絡先は聞かなかった。
たった一晩お茶を飲んだだけのひと、でも良かったし
また会いたくなったら
あの掲示板でまたあのひとを探せば良い。
あのひとも会いたいと思ってくれたなら
その時までに
足りないものを磨いて今度は連絡先を聞こう。
#また会いましょう
#スリル
孤独を抱えて駅のホームに立ってはいけない。
一歩と言わず充分に後ろに下がりなさい。
踏切も同様。
ひいては全ての線から充分に距離を取りなさい。
それはしっかり手綱を握るべき物。
楽しめる内は良いのです。
空想であると言い切れる様になるまで待ちなさい。
スリルとは決して
冷や汗と命で味わう物では無いのです。