雫
雨垂れ石を穿つ
私の雫にも満たないくらい小さな思いが少しずつ貴方に伝われば貴方の心にぽっかりと穴を開けることが出来るかな。
その穴を私が埋めてあげる。
あっという間に貴方は私に堕ちるのよ。
私から離れていかないで。
もう二度と哀しみに囚われたくはないの。
嫉妬も束縛もしないと誓えるよ。
ただ、貴方だけを見つめ続けて死ねるよ。
貴方は地獄に垂れる蜘蛛の糸を滴る甘い蜜。
一雫でも味わえばどんな女も一殺ね。
そんな蜜に群がる私は夏の虫。
何もいらない
君さえいてくれたら他には何もいらない。
君の存在が僕にとっての幸せで生きる糧なのだから。
常々君にはそう言っている。
でも、君は表面上だけ嬉しそうにするのみでその笑顔の内側に陰を残しているようだった。
そうだよな。
僕は僕の幸せだけで何もいらないと言っている。
その他に必要なものがあるのに僕はその想像にすら至れていない。
君の幸せを僕は見て見ぬ振りをしていた。
もしも未来を見れるなら
もしも僕の未来を見れるなら僕はいつまで貴女を好きでいられるか見たい。
貴女と出会った時に生まれた熱をいつまでも保っていられるのか。
貴女を患ったまま僕は死ねるのか不安なんだ。
日々僕の価値観を蝕む貴女という存在が許せない。
つまらない人間な僕を何故貴女は愛したのか、そんなことは
死んでもわからないと分かっている。
でも、言葉にしようがない不安感というものは僕の中で一秒ごとに大きく肥大化していくんだ。
その不安に僕の愛は屈しているのかな。
こんなことを考えたって実際に未来が見える訳じゃないし、
貴女が僕の不安を取り除けるはずもない。
じゃあそれなら、この後貴女の好きな食べ物を買って行った時にどんな反応をするか見れるようになりたいな。
無色の世界
白と黒。赤と青。赤と白。緑や黄。
この世には様々な色が溢れている。
貴女が見ている世界には何色があるの?
貴女に私は何色で見えていますか?
私は貴女にとって悪人ですか?善人ですか?
恋人になれる人ですか?敵になる人ですか?
私は貴女の瞳を濡らしたかった訳ではないのです。
貴女の瞳を濡らしたその雫が悲しいものか嬉しいものかは
私には判りかねます。
でも、私が思うにその雫は喜ばしいものだと思いました。
貴女の無色だった世界を私がカラフルなものに変えてしまいましたから。
その代わり、私は貴女を失った悲しみで目の前が真っ白に
塗り替えられてしまいました。
しかし、貴女に怒りはありません。だって、この世界は色に溢れすぎていて私の目には明るすぎましたから。
特に、貴女が一番輝いていた。
桜散る
桜舞う季節に君は生まれた。
さまざまな命が芽吹く中に小さな希望ができた。
君はいろんなものに目を惹かれ、どこまでも駆けてゆく。
手を離したら帰ってこなくなってしまうくらいにね。
大切に君の手を握って、いろんなものを見たね。
咲き乱れる季節の花たち。
君の体よりも大きな動物。
手を伸ばせば届きそうな星々。
桜が八回咲いたとき、君は嬉しそうに緊張しながらも学校に行った。
僕たちが学校へ行くと頑張って手を挙げて答えてカッコいいところを見せてくれたね。
かけっこで転んで泣きそうになりながらもゴールまで走り抜けた君に僕は泣いていたよ。
ぐんぐん背が伸びていつの間にか僕の身長へ届きそうになって、ついに僕より大きくなったね。
これからの君の未来は今よりも楽しいことに満ち溢れているから。
もし、つらいことがあっても僕たちは君のそばにいるよ。
何度も桜は咲くし、季節が過ぎていけば桜は散る。
散ることは悲しいことじゃないよ。
だって、それは君が成長した、生きてきた証だからね。