エイプリルフール
四月一日。
いわゆる嘘をついてもいい日。
でも、私からしたらそんなの毎日だった。
友達を増やすために好きじゃないものを好きと言う。
友達と仲良くなるために見てないテレビも見たと言う。
簡単なテストも分からないふりして頭角を現さないように。
嘘で私を武装させる。
気まずい空間も誤魔化して生きていく。
傷つきたくないから。
誰かに嫌われたくないから。
裏切られたくない。
そんなことを続けていたら私らしさは嘘でしか描けなくなった。
本当のことはどこに忘れてしまったんだろう。
幸せに
もう一度あなたと会ったら、なんて言葉で迎えよう。
「また会ったね」
「久しぶり」
頭に浮かぶ言葉はありきたりで人畜無害な味のない言葉だけだった。
私があの人へ伝えたいことはこんな薄氷のようなものではなかったはずなのに。
暗くなったスマホのディスプレイに写った私は笑顔を忘れたあの日の写真のように満ち足りていなかった。
二人で星を繋いで新しい星座を作ったり、流れ星にお願い事をしたりした日々は、鑑賞用のフィギュアのように二度と陽の目を浴びない。
あなたは私に「君以外の人を好きにならない」って言ったのに。
「君以上に素敵な人はいない」って言ったのは幻だったの?
今頃君は私じゃない誰かに永久の愛を誓っているはず。
私以外の私よりも素敵な人に。
いつまでも私は以の字に命を捕まれている。
……あなたを迎える言葉がやっと見つかった。
「死ぬまでずっとお幸せにね」
何気ないふり
あなたのことはもう興味ない。
有象無象のやつらと同じそこに存在するのみ。
ただ、偶然同じクラスになっただけ。
運命だなんてロマンチックなものではない。
どうせ何も起こらない。
お互いに干渉しないで一年をやり過ごす。
一度は間違えても同じ轍は二度踏まない。
前は求め会うように出会ったのに今じゃ出会わないことが幸せだなんて皮肉だね。
もう忘れるべきなんだよね。
そう思っても何気なくあなたを目で追っていた。
ハッピーエンド
誰かが微かに呼吸する音が聞こえる。
私の目の前には眠ったように目を閉じたまま横たわった人。
まるで時が止まったように美しく眠っているようだった。
声をかければ今にでも目を覚ましてくれる気がした。
だけど首筋へ手を伸ばしても脈拍がない。
「死んでいる。」呟いてもその言葉は煙のように浮かび上がっては夢のように霧散してしまった。
この人を見つめ続けて何年経ったのか。
あなたの顔にはいつの間にか刻まれた皺も増えて、知らないことが減ったような落ち着いた雰囲気があった。
永久に枯れぬ花のようなあなた。
薬指に嵌められた小さな指輪が始まりを
あなたの姿が終わりを造りあげていた。
そうか。あなたはもういない。
私はあなたを失ったんだ。
目の前に肉体があってもあなたはもう目覚めない。
あなたは幸せに溢れて遠くへ行ったのならそれでいい。
涙を流してあなたを私の内で留めておく。
私は悲しみに暮れるだけ。
あなたのハッピーエンドと僕のハッピーエンドは交わらない
僕が望んだあなたが主体のハッピーエンド。
見つめられると
別れの言葉を言おうとあなたと向かい合った。
人の黒ずんだ一面を見たことの無さそうなその純粋な目で見つめられてしまうとなんでも話してしまいそうだった。
南風がすべてさらけ出せと囁くように吹いた。
いつからか吐きそうなほどあなたを憎んでいた。
町中で見かけた美人を目で追うように、嫌いな人を眼中から外すように、抗うことなくあなたを嫌いになった。
出会った頃から変わらない人をどこまでも信じられる心。
あなたの持つ無償の愛が許せなかった。
あなたは唯一の愛と名乗ったくせに愛を沢山持っている。
誰かを愛したって何かが返されるわけじゃない。
それなのに他者へあなたは愛を送り続ける。
おぞましいとしか思えない。
寒気が全身を覆い自分の小ささを知ったようだった。
あなたに全てを吐き出して、傷つけて嫌われれば楽になれると何度も思った。
そう繰り返していくうちに顔も見たくないほどあなたを嫌いになった。
ずっと最初で最後の運命の出逢いだと思っていたのに。
あなたは相変わらず澄んだ瞳で私を見つめている。
夕焼けは愛と憎しみを焦がして沈んでゆく。