終わりは突然やってきた。
3年間付き合って、プロポーズをして、結婚することになった彼女。一緒に住んで、幸せに暮らそうねって言ったのに。朝、目が覚めたら白い封筒が枕元に置いてあった。
『今までありがとう、ごめんね。間に合わなかったみたい。……もし、あなたがこんな私のことも愛してくれるのなら、一緒に棺に入れたらいいな。それで一緒に燃やされるのなら、私は幸せ物でしょうね』
穢のない無垢な白。美しい文字。本当に彼女そのもののようだ。
彼女は手紙へと姿を変えていた。
「あなたのことを一生大事にするよ。最後まで一緒だからね」
『だいすきよ』
書き換えられた文字を見て、まだちゃんと、ここに生きているのだと、1枚の便箋から鼓動を感じた。
新しい姿の彼女との生活が今、始まった。
12/9お題「ありがとう、ごめんね」
ふっ
そっと短く吹いた息で小さな灯が消える。焦げ臭い香りが暗闇とともに広がった。
「おめでとう、⬛⬛」
私の目の前には真っ白いショートケーキがあるだけ。
銀色のフォークで適当にケーキを掬って食べた。やけに甘ったるいクリームの味が舌先にしばらく残ったままだった。
「キャンドル」
どうやら私は死んでしまったらしい。そして、元は人間であったことしか今はもう覚えていない。
魂だけの状態でふよふよと浮かんでいる。この姿では簡単に風に流されてしまう。
そうだ、風に乗ってどこまでも飛んでいこう。色々なところを見たらきっと、自分が何者だったのかを思い出せるに違いない。
「風に身をまかせ」
寂しさを紛らわせたくて、あなたの遺した日記帳を開いた。私のことは何一つ書かれていなかったけれど、それでもあなたの生きていた証だと思うと愛おしく思えた。
(寂しさ)
一つ話をしよう。とりとめもないが笑っておくれ。まぁ、そうだな、この話は退屈だと欠伸をしてもいい。
でもね、話を聞いてる間、君の時間は僕のものだ。それだけは譲れない。
(とりとめもない話)