もっと知りたい
高校の入学式。桜の木の下で誰よりも目立つ派手な桜色の髪をしたあの子に一目惚れをした。桜の花弁とと一緒に天使が落ちて来てしまったのかと思った。
人生の運を使い果たしたのか…あの子と同じクラスになることができた。残念なことにあの子の席は1番後ろの左端っこ。僕は1番前の真ん中で全く関われそうにない。
入学して2ヶ月。あの子は問題児らしい、先生によく注意されているが派手な髪の毛を戻すつもりはないらしい。どれだけ注意されても笑って誤魔化し、降参するのはいつも先生。
まだ話したことはないけど、明るく元気で良い子だ。休み時間や授業中よく声が聞こえる。透き通っていて綺麗な声だ。
入学して5ヶ月。夏の桜なんておかしいかもしれないけど物凄く綺麗だ。地毛は黒らしく、前は染めたなんて話してたな。
そう言えば、席替えをしたんです。僕は左端っ子であの子は左から3列目の席。気付いたら見惚れているから、この席は危険だ。毎日綺麗な声と笑顔と髪が見れていてとても嬉しい。
入学して10ヶ月。席は変わってしまったけど前と同じように見惚れることができる席。
寝ても覚めてもあの子のことばかり。名前を読んだことだってないのに。あの子はどんなのが好きなのかな、彼氏はいるのかな、家族構成は、好きなタイプは?知りたいことが沢山ある。
入学して12ヶ月が経ち、2年生になった。
2年でも同じクラスになり相変わらず私のことをガン見してくる細眼鏡サン。
何でそんなに見てくんの⁈
ずっと気になってる、もしかしてうるさい?
そんな真顔で見ないでよ、正直怖い。
でも、私を真っ直ぐ見ている表情は柔らかい。
私を見ている理由が知りたいな。
何も知らない人、だけど何か教えてほしい。
ひなまつり
今日は女の子の日らしい。
何したらいいかわかんないけど。する気もないし。
そんなことも考えながら登校してたら、前の女が転けた。いつもなら素通りだが、今日は女の子の日らしい。声をかけてハンカチを貸してやった。
授業中、隣の席の女がくしゃみした。半袖で寒そう。いつもなら何もしないけど、今日は女の子の日らしい。ジャージを貸してやった。
放課後本を借りに図書室へ行った。図書室は広いから移動するのが大変。本へと手を伸ばす女がいた。椅子を取りに行くのも面倒だろう。いつもなら素通りだが、今日は女の子の日らしい。本を取ってやった。
鞄を取りに教室に戻れば田中が1人で掃除をしてる。いつもなら何も言わず帰るが、今日の俺は物凄く優しい。手伝ってやった。
俺が何かした女達と田中は喜んでいた。
良いことしたな、なんて考えながら歩き出す。
ひなまつりってきっと、女の子に優しくする日なんだろう。田中はまあ、オマケだ。
たった1つの希望
楽しいことが何もない。
そんな私が推しに出会った。
趣味、特技、愛想…何もない。
高校生になってキラキラな生活をすると思ってた。
リアルはひとりぼっち、トイレに行く勇気もなくて教室で1人飯。悲しい。
でもこれまでは推しが居なかった。
推しができた時から世界は変わった。
何もかもがキラキラしていて、お姫様になった気分。
別に、ひとりぼっちが変わったわけじゃない。
けど、いつも通りの日々が楽しくなったんだ。
例えば1人飯。1人だからキラキラな画面を見つめながらご飯を食べれる。最高。推しを眺めながら食べるご飯っていつもより美味しい。
1人の通学も推しの声を聞いてる。楽しい。
ある日、推しのライブが決定した。
絶対に行きたい!
自分から何かを頼むのは何年振りなのか…母さんはびっくりしながらもお小遣いでなら、とOKしてくれた。
悲しいことに、嬉しいことに?全くお金を使わない生活だったから沢山のお金がある。
ライブは3ヶ月後。
推しの目に入るなら可愛く、綺麗に、覚えてもらいたい!
ボサボサだった髪は苦手な美容室に行って整えてもらい、中2を最後に行ってなかった服屋で推し色の可愛い洋服を手に入れた。笑顔の練習もした、ペンライトも買った。完璧!
前より笑顔が増えた。ライブで休むからって学校の予習をして点数も増えた。
趣味、特技…持ってなかった。
これは推しに会ったから。
前髪も完璧!ペンラにメイク道具、サインしてもらう用のグッズ!準備はできた!いざ出陣!
行ってきます!
こんなに笑顔で家を出たのは初めてかも。
ライブは最高だった。
何回も目が合ったような気がする。
ライブ後の握手会。
可愛い…!大好きです!ずっとずっと、永遠に愛してます!生きる希望です!服の色も揃えたんです、!
『私が?嬉しいな。今度はスカートお揃いにして来てよ!君ならきっと可愛いよ、また来てね♡』
たった1つの希望から、たくさんの幸せ。
遠くの街へ
みんな大っ嫌い
そんな思いで家を出た。
お母さんもお姉ちゃんも先生も!みんなみんな大嫌い!みんな私のことわかってくれない。
走って走って、今どこかもわからない。
趣味もないのにいっぱい貯めたお小遣い。
使い切るまで、使い切っても帰らない。
スマホには通知が溜まってる。出て3時間は経ったかな。通知をオフにしてまた歩き出す。
…海の音!
音のする方へ走ってく。綺麗な海だ。
さっきからブーブーうるさいスマホをそんな海に投げ捨てた。すぐに見えなくなった。
昔聞いた絵本の話。海の底には綺麗な人魚がいて、毎日踊って歌って楽しく生きているらしい。
そんな話がふと頭によぎった。あるわけない、現実なんかにそんな綺麗な話が。
でも今は消えてなくなりたい。
汚い現実より綺麗な嘘。
綺麗な嘘にしがみつくしかない。
ちゃぷん
何かが水面に跳ねた。
いつもならただの魚だと思うだろう、けど今は希望を持ってる。
きっと人魚だよ。
ただの水音が私の背中を押していく。
遠くへ、遠くへ。嫌なことなんて忘れて。忘れさせて。
いつのまにか肩まで濡れてる。しょっぱいね。
息が苦しい。苦しい。苦しい。苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい苦しい!!
涙は消える、海になって。もう陸は見えない。
やっと幸せになれる。
ぶくぶくぶく
その女の子は、最後に夢を見た。
スカートがヒレになり、綺麗な人魚と共に踊り歌って幸せな日々を。
女の子は海の底の、遠い遠い人魚達が暮らす街へ行くことを夢に見ていた。
この女の子人間と人魚のハーフにしたかったけど
体力とノリ的に書けなかった。
陸の空気が合わなかっただけで、
海の底で波に揺れながら楽しく過ごしてて欲しい。
死ネタにする気はなかった。てかなってないもん。
この後は天国とかじゃなくて自分も人魚になるよ。
きっと。
どうして
世の中には『どうして』って思うことが幾つもありますよね。今回は私がずっと思っている『どうして』を紹介しようと思います。
どうして
私のクラスの男半分は坊主かモヒカンなの
サッカー部ならセンター分けだろ!
どうして
インスタでフォロワー数比べて自慢するの
何がいいのよ!
どうして
1ヶ月で3キロは余裕で太れるのに痩せれないの
そろそろ出荷されそうだよ!
どうして
夜は寝れないのに昼間は眠いの
瞼が重すぎて何キロあるか試してみたいよ!
どうして
女優の声は小さいのに男優の言葉責めが聞こえるの
男優は息すんな!
パッと思いつく『どうして』を紹介してみました。
共感できるのがあれば嬉しいです。
1番の『どうして』は
角以外は汚い消しゴム
ですね。あれ本当なんなんでしょう。
借りた消しゴムの角だけは絶対使っちゃいけないという雰囲気もなんなんでしょう。
この世には説明のつきようがない『どうして』が沢山詰まっています。
沢山の『どうして』を見つけて、暇な時間で考えてみましょう。