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1/22/2025, 11:55:10 AM

『あなたへの贈り物』

私の心の中には、私だけの友達__イマジナリーフレンドのようなものが2人いる。
最近、その友達に贈り物をすることが増えた。
贈り物というよりかは、儀式に近いかもしれない。
自分の持ち物の中から、その友達に似合いそうなもの、好きそうなものをそれぞれ選んで、引き出しにしまう。
自分でもこんなことをしている意味が分からないし、全く意味のない行為だと思う。
でも、何故かやらないと不安なのだ。
理由は分からない。
もしかしたら、こうして2人の存在を確かめているのかもしれない。
2人が現実に存在しないぶん、形に残るもので表したいのかもしれない。
ずっと一緒にいたはずなのに、今更2人の存在が分からなくなってしまうなんて、少し寂しい。
私ももう、大人になりつつあるのかもしれない。
大人になったら、2人と話すこともなくなって、記憶も綺麗さっぱり消えてしまうのかもしれない。
そう思うと、怖くて仕方がない。

1/21/2025, 7:58:10 AM

『明日に向かって歩く、でも』

少し……しんどい。
こんなに恵まれた環境でしんどいと言うなんて贅沢かもしれない。でもふとした時に、そう思ってしまう。
帰り道や風呂場、布団の中での空白の時間。
過去の失敗を思い出しては、息が苦しくなる。
また同じ失敗をしたらどうしよう。
首元を押さえながら、もう失敗しないように、全てをシミュレーションする。
こう言われたらこう言おうとか、この時に失敗するかもしれないとか。
考えれば考えるほどにしんどくなる。疲れる。
毎日人と接するのが辛い。
授業を受けていても、ご飯を食べていても。
ふとした時に左腕がひりっと痛む。
もう傷は消えているし、新しく刻むことももうない。
十分幸せだ。
そう思って、今日も明日に向かって歩く。でも

1/18/2025, 12:39:41 PM

『手のひらの宇宙』

私は部屋で一人寝転がって、手のひらに乗せた小さな宇宙を眺める。名前の分からないそれは、透明なガラス玉の中に宇宙を閉じ込めたような見た目をしていた。
キーホルダーになっていて、前までは通学カバンに付けていたが、今はもう引き出しの中にしまったままだった。
左右上下に動かすと、太陽の光を反射して、中の星がきらりと光る。
これは、彼女とプラネタリウムに行った時に買ったものだった。同じものを彼女も買って、お揃いで身につけていた。彼女は恥ずかしいと少し嫌がっていたけど、私は二人で同じものを身につけていることが嬉しかった。
こっそり付けている彼女が可愛くて、からかって拗ねられたことを覚えている。
あの時の私は、こんなことになるなんて思いもしなかっただろう。
彼女と私が歪な関係であってもなお、心のどこかでずっと一緒にいられると信じきっていた。
でも、今はもう彼女と会うことは叶わない。
私たちは、最初から幸せになんてなれなかった。
そのことに気づいたのは、一年前。
カメラの方を一切見ずに目を伏せながら画面に映る彼女。
テレビの画面では物騒な文字が流れていく。
私はそれを、ぼんやりとした頭で見ていた。
数ヶ月後、夕食を食べながら見ていたテレビに「死刑」の文字が映った。
箸が手から落ちる。
一瞬だけ、心臓が止まったような気がした。
同じ宇宙にいても、私の全く知らないところ、知らない時に死んでしまった彼女。
誰もが死んで欲しいと思うような悪人でも、私だけは生きて欲しいと願っていた。
私はキーホルダーのチェーンを手に痕がつくほど握りしめる。それでも宇宙は変わらず、手の中できらきらと光り続けた。

12/31/2024, 1:36:05 AM

『1年間を振り返る』

自分がこのお題を見て最初に思い浮かんだのは、
「今までで一番死にたいと思った年」。

なんでこう思ったのかは自分でもよく分からなかったので、今年の出来事を記録として書き出してみる。

まだ2024年が始まったばかりの3月。
母に怒られ腕を切り、それが両親にバレる。
リスカの原因が怒られたことだということと、過去にも何回か切っていたことがバレなかったのは不幸中の幸い。
そこからスマホが禁止。
自分は半分依存症のようなものなので、スマホがないとしばらく何も手につかない。
この頃、友人の暴言や軽い暴力に耐えきれなくなり、担任の先生に相談。無事解決する。
しかし、いまだトラウマは拭いきれていない気がする。
そこからはあまり覚えていない。
学校の中で自分が最も嫌いな、運動会と水泳を耐え、受験勉強やなんやらしているうちに受験当日。
ようやく努力が報われた。
そして今。
最近は特に辛いこともなく、時々死にたいと思いながら創作をする。

改めて書き出してみるとどうでもいいことばかりだが、自分なりに辛かったのだろう。
しかしいい事もあったわけで、一年とはこういうものなんだなと思う。

12/29/2024, 8:19:27 AM

『冬休み』

太陽の光が眩しい昼間の病院。
昨日までの悪天候が嘘のように、空は雲一つない青空だ。
季節は真冬。寒さから体調を崩す患者が多く、毎年この時期は忙しくなる。
しかし今日は、なぜか病院内はがらんとしており、医者や看護師は暇を持て余していた。
外科医の菜緒も例外ではなく、デスクに座ってどこかの偉い医者が書いた論文をだらだらと読んでいた。
菜緒は窓際の席なので、壁についている大きな窓から外の様子を見ることができる。
明るい日差しに目を細めながらも、窓に顔を近づけると、ちょうど病院の隣にある公園が見えた。
公園ではプラタナスの木の下で子供たちが遊んでいる。
真昼間にも関わらず子供が遊んでいるのは、冬休みだからだろうか。
菜緒は大人しい子供だったので、外で友達と遊ぶことはあまりなく、家で本ばかり読んでいた。
そんなことを思い出しながら外を眺めていると、先輩である早瀬が隣の自分のデスクに座り、菜緒と同じように外を眺めていることに気づいた。
いつ入って来たのかは分からないが、早瀬はいつも気づけばそこにいるといった感じなので、特に気にしていない。
流石に、足音も立てずに後ろに立っていた時は驚いたが。
「今の時間、学校じゃないんですか?」
公園で遊ぶ子供を眺めている早瀬は、時計をちらっと見てから言う。
『冬休みじゃないですか?』
菜緒が言うと、早瀬は少し吐き捨てるように、あーありましたねそんなもの、と言った。
「まぁ、社畜には関係ないでしょうけど」
そう、うちの病院は休みが極端に少ないのだ。
『1日ぐらいあってもいいと思いますけどね……』
「ですよね?どうせ来てもやる事ないのに出勤させやがって……。上層部の野郎共なんてほとんど仕事してないじゃないですか」
早瀬は呟くように言う。
もし院長がこれを聞いたら、医者にあるまじき発言だと怒るだろう。
しかし早瀬がそう言うのも無理はない。
彼はアメリカの学会に出席し、そのままアメリカで緊急オペを一件済ませ、昨日帰国したところだった。
もちろん休みは無しである。
おまけに今日は徹夜明けで出勤したらしい。
早瀬は寝ていないと口が悪くなるというのは、周りの外科医の中では共通認識だ。
二人は窓の外を眺めながら、上司に八つ当たりをされたとか、友達の惚気話がだるいだとか散々愚痴を垂れた。
誰もいないのをいい事に暴言を吐いて少しすっきりしてきた頃、緊急事態を知らせるベルが鳴り響いた。
「来たか」
その音を聞いて、早瀬と菜緒は医者の顔になる。
二人は長い白衣を翻して、病室へ走っていった。

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