子供のように、みてくれだけ合わせれば
実物になった様に錯覚できた
わかっていた
人助けをしても、善人になれるわけではない
コーヒーを飲んでも、大人に近付けるわけじゃない
それでもいいと思った
錯覚、そして、満足
どちらも、憧れているからこそ起きる現象
続けてみよう、線が輪郭に変わるように
題 放課後
告白するべき相手はいない、される気配もない
幸い、成績はまあまあなので
居残りさせられる事はなかった
部活も、特に惹かれるものはないので、帰宅部
授業後は特に用はなく、まっすぐ帰る
青春小説を読み終えて、ふと思う
夕方の校舎内での恋の駆け引きは
どんな緊張感を孕んでいるのか
夕陽に照らされた金色の教科書は
知識の価値をそのまま反映させた色で
本質に迫る絶好の機会ではなかったのか
打ち込める部があれば、万雷を浴びた様に
満ち足りて死を迎えられたかもしれない
つまらない、灰色な時代だった
身体が熱くて、だるい、こういう日は
外に出るのはもちろん、見るのも億劫になる
窓は開けて、カーテンは閉める
風が襞を掴んで、峰々を作り出す
眺めていると、とろりと眠気が湧き出す
甘い出汁の匂いで目が覚めた
光の中で、誰かがスプーンを差し出す
差し出されたお粥は、失ったエネルギーと塩分を
補うのに最適な味付けだった
「誰か」はいつの間にかいなくなっていた
夢の中でまた夢を見たようだ
なのに、うっすらと「誰か」のシルエットが
思い浮かぶ
グーサインをして
「大丈夫」
嬉し涙も、悔し涙も原因は同じ
感情が器の限界値を超えた時
それは溢れ出す
一見、両極端なこの二つの感情も
なんらかのきっかけで簡単にすり替わる
「アナタトイルト、ココロオドル」
留学生のあの子は突然、そう告げてきた
僕、何かしたかな?ただ、
毎日、教室で朝の挨拶をして、授業でわからない所を
教えてあげて、校門で別れの挨拶
その繰り返しをしているだけなのに
そういえば、この習慣は彼女が学校に来てからで
それまでの僕には、そんな相手が一人もいなかった
彼女も、いつも一人で、本ばかり読んでいる
そんな、2つの孤独が導いた結果なのか
縦横無尽に跳ね回るようなこの高揚感も?
確信は持てないけど、僕は口を開く
「僕も、心踊る」