鶯になりたかった鳩

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10/18/2023, 1:01:39 PM

金木犀の香りがふと香る。

もうそんな時期かと思って、ふと上を向くと、
鉛筆みたいな白い飛行機と半透明の細切れの雲が
澄んだ青い空のキャンバスに
さりげなく描かれているようにみえた。


「そろそろ衣替えしなきゃな」なんて思うけど、
土日のための服の量なんて、たかが知れている。
とっておきの服は、きっと今年も出番がないだろう。

それに、セーターやコートはまだ早い。
だから服たちは、クリーニング屋の袋のままで 
世界が寒くなるのを待っているのだ。

「今年ももう終わるね」なんて笑う君に
「まだイチョウすら落ちてないよ」と言い返すのは
いささか冷たいだろうか。

「夜中に鳴く虫は、なぜ四季がわかるのかしら」
と真剣な眼差しで語る君に
「遺伝的なプログラムさ」と言い返すのは
いささか味気ないだろうか。

そんなことを思いながら僕は、再び歩き始めた。

10/15/2023, 10:31:29 AM

逃げることはできない 
暑い陽射しの下
誰もが必死に走るリレーにて

それほど仲よくない友よ
鋭い眼差しの君が向かってきた

バトンを渡すために ただ駆け抜ける
そこには何かが宿っているようだった
その力強さに 思わず鳥肌が立った



一瞬だけ、結ばれる瞬間



裸足の僕はグラウンドの砂を蹴り
痛みなど気にせずただ走った
ただゴールを目指すために


地面を蹴る感覚に覆われて
少し下手くそなアナウンスも
叫ぶ応援団の声も
聞こえなくなった

ただ前を走る背中を追いかけて

10/12/2023, 12:44:47 PM

夕立がやってきて 靴下までびっしょりな

下校時間の 帰り道

傘なんてなくて なぜか走りたくなって 

足が速くなる靴の力を試したくなって

ランドセルをしっかりと背負い込み

ダッシュした

雨が 目に 入ってくる


排水溝のあみあみは

驚くほど滑り

ぼくは こけてしまった

顔に傷はつかなかったけど 

ぼくを守ろうとした手は少しすりむけていた

しばらく起き上がることができず

雨と、 汚い泥水が流れる音だけに包まれた


なぜ走りたくなったのかは

今ではわからない

そんな気は 起こらない今のぼく

傘という弱さを手にしたからなのか

大人になったからなのかは

わからない

10/7/2023, 1:54:44 PM

君の 輝く微笑みが うまく見えない

それはやっぱり ここが 暗いからなのか

軽やかに踊る クラゲたちの 水槽は

明るいようで 暗い

青と緑が交錯し クラゲの透明さが際立つ


F値やらISOやら なんて無く

君の微笑みは うつらない

わかっていたけれど僕は 力を込めて

シャッターを切った



それでフィルムが無くなろうとも、
クラゲしか 見えなくとも、

その微笑みを

ただ そこに閉じ込めたかった

10/1/2023, 1:00:00 AM

きっと明日も来るだろう

そんな確約はないもので

寝たら 三途の川かもしれなくて

朝日に会えない可能性もあるわけで


地獄の沙汰も金次第ですが
(世知辛いので、閻魔様も積み立てNISAを始めたそうです)

そもそも通貨が円じゃなくて

円安の可能性もあるわけで

仮想通貨かも、しれなくて


わたしが 三途の川に行こうとも

変わらず朝日はうごめいて

誰もが 渋滞に疲れ苛立ちを覚える日々

それは続いていく


今日を懸命に生きようと踏ん張りすぎる必要はない

だって明日が来たことには 

それなりの価値があるでしょう


三途の川で 後悔せぬよう 頑張りすぎても

きっと何かしらの後悔はあるものでしょう
(植物の水やりを忘れたことかもしれない)

大きな後悔だけは しないように紡いでいこう、

そんな気概じゃ 閻魔様に笑われるだろうか

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