鶯になりたかった鳩

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金木犀の香りがふと香る。

もうそんな時期かと思って、ふと上を向くと、
鉛筆みたいな白い飛行機と半透明の細切れの雲が
澄んだ青い空のキャンバスに
さりげなく描かれているようにみえた。


「そろそろ衣替えしなきゃな」なんて思うけど、
土日のための服の量なんて、たかが知れている。
とっておきの服は、きっと今年も出番がないだろう。

それに、セーターやコートはまだ早い。
だから服たちは、クリーニング屋の袋のままで 
世界が寒くなるのを待っているのだ。

「今年ももう終わるね」なんて笑う君に
「まだイチョウすら落ちてないよ」と言い返すのは
いささか冷たいだろうか。

「夜中に鳴く虫は、なぜ四季がわかるのかしら」
と真剣な眼差しで語る君に
「遺伝的なプログラムさ」と言い返すのは
いささか味気ないだろうか。

そんなことを思いながら僕は、再び歩き始めた。

10/18/2023, 1:01:39 PM