鶯になりたかった鳩

Open App
5/6/2025, 8:59:43 AM

またひとつ 歳をとった

1万3000円のヘッドホンを買ってもらって

コンポにそれをさしこんだ日から

ちっとも変わらない 僕

でもあの日だけは 感動を解釈していた


髭は生えたし 声も低くなった
猫背になった背中には 遅れてやってくる筋肉痛
身体だけは どうも 劣化してるようだね

あの頃の僕が思う大人たちが 
こんなに子供だとは 思わなかったな


だんだん短くなる君からの手紙

お互い要点を伝えるのが上手くなったのか
時間が  足りなくなったのか

そのうち happy birthday の
一言になるかもしれないけれど

きっとまだ続く旅のために 紡いでくれるかい

4/12/2025, 12:38:19 PM

見飽きた通勤路は車の
ウインドウガラスが映し出すもの

毎朝会うバイクの男 今日はアンタが速いようだ

家を、出る、その数分の誤差なんて 
神さまにとっちゃ 無いに等しいらしい
だからアンタとだいたい 並ぶ
冗長な赤 信号機 

名も知らんアンタを 明日はこっちが抜き去る日


花見の主人公、それは葉が混じってしまうと
誰からも見られなくなるぞ
「来年見ればいいから」だって
落ちてる花びらは ただ踏まれるだけ、
酒のつまみは 枝の方の花びらだけ、
見返すことない 写真の中

来年も満開がさ、あるんなら
アンタも、まだ並んでいるか
冗長な赤 白線の内側で

誰だって死にゆくから 同じ風景をともにしたい
0と1で表現される 写真に残したい

だけど 信号を抜けた先の 仮面のせいで
それすらも忘れていくんだよ

忙殺の片隅に あるかい

バイクのアンタも そう思ってるかい

11/4/2024, 1:33:36 PM

ウヰスキー トゥワイスアップで

樽の匂いがして 喉が消毒されてゆく


哀愁を誘う 黒くて白いピアノのあるバー

少しだけテンポの遅いバーテンダー

誰かが演奏する時は

少し遅れて ビー・ジー・エムの

音が消える


食べすぎた胃に注がれるalcohol

サックスの音色も 勘弁してと

グランドピアノは 開放されている

哀愁を誘うのは トゥワイスアップのせいだね

ロックにすべき 秋風のよふけ

6/19/2024, 12:50:00 PM

相合傘ひとつ 

些細な言い合いに関係なく雨は降り続く

大小でこぼこ 君の左肩が濡れている

雷雨の音が加速して 早まる足


雨粒はポリリズム その音だけが響く

土の匂い ふと香る洗濯物の香りは君


背中に汗 紫陽花に水滴


ふと思い出す プール開き前の掃除

コケに転んで 頭を打ったこと

相合傘 ひとつ 君はまだ傘の中

少しだけ傘を左に傾けた

5/6/2024, 1:14:54 PM

明日世界が終わるなら

ネクタイなんか締めずに

とっておきのスニーカーの靴紐閉めて

10万キロ近い車に乗って

何回聴いたか分からないアルバムをかけよう
(そこはCDだとなお良い)



隣には君がいて 少しだけ窓を開けると

車のエンジンがタイヤが頑張っている音がする

こないだ入れたガソリンは半分もあるさ



行き先はどこでも良い
(海でも山でも喜んで。この車は四駆ではないけど)

だって僕らだけ神隠しに遭うかもしれないし

どこだって後悔するのがオチさ
(鮮やかな海は人気で混雑するだろう)

「いっそのこと家が落ち着くね」なんて笑い合おう


世界が終わるより 

僕らが終わる可能性が高いわけで

とりあえずネクタイ締めて すり減った踵で歩くよ

君に会える日まで

Next