鶯になりたかった鳩

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10/5/2025, 2:59:49 PM

家路の足取り 今日も夜更けの真ん中にいた

もう何回目かは数えてはないけれど 
同じような順番で 同じ声が唄っていた

「いつも」を構成する交差点 
ハンドルの持ち方だけが雑になっていく

相変わらず誰かが漕ぐ車輪の、微かな反抗に出会う

くだらない信号機の少し上
おぼろげな月が飽きずに浮かんでいた

科学が、その満ち欠けを暴こうとも
ひと時の文学に、I love youとして使われようとも
人類の大きな一歩が、誰かのフェイクであろうとも

夜を告げる その役目を
僕の存在とは関係なしに 滞りなく続けるだろう
少し汚れた窓ガラスの向こうから

9/14/2025, 2:54:54 PM

殆ど同時に見上げた気がしたけれど
見えたのは 単なる影
夜空に浮かんでるはずの月の影

曇天を体現する空は
雨上がりの静けさを最大限に露わにしていた
君の腕にある傘が その役割を終えて
小さくまとまっている
何でもない ただの帰り道

でも 僕らは随分と歳をとった
どう足掻いたって
君の誕生日を100回祝うことはできない

膨張と縮小を繰り返す宇宙からすれば
ちっぽけな僕らとその命

抵抗する僕らは傘をさしてエアコンをつけて
ただのニュースに一喜一憂している
手のひらにあるものを数えて一安心を繰り返す

8/28/2025, 12:41:55 PM

祖父が亡くなって もう何年経ったろうか
胸が締め付けられると言われた時
明日に病院行こうねと返した僕ら



我が家の前には 救急車一台
見慣れた居間に 救急隊が二人

車で避けるだけのその車は
近くにあると、意外と大きいものだった

通れぬ車で大渋滞
敷地の中に入れろと 怒鳴る先頭の男
ボサボサの髪とパジャマで 蘇生中なんで、と返す

気づけば 全員がUターンして 消え去った


手入れをする祖父がいたことで
我が家の庭には
秩序があった 四季があった

誰の生き死ににも関係なく 夏草は伸びる 
誰にも知られずに ただ伸びていく
もうすぐ夏も終わる 

僕は、あと何回墓参りに行けるだろうか



8/27/2025, 1:49:35 PM

どんな金持ち 聖人悪人、

なんなら凡人俺だって、

必ずやってくる最後の記憶


あえて言うなら 命の死(オレ、オマエ、みんな)


今日か明日か分からんけれど

二度寝のつもりだったなんて言いたかないから

ルーチンどもに身を任せ 今日を削ってく

(削った先に温泉が出るか?宇宙の果てか?
なんて愚問すら浮かばぬ、今日、この頃)

俺を産んだ人 見つけた人 守ってくれた人 
順番は分からんけれど 絶対な平等

ここにいるうちに 何をなす?

人事を尽くせ、天命をまて、
そんな夢物語を餌に、今日も削っていく
同じ音のアラームが叫ぶ! こんな文すら忘れてる


8/23/2025, 3:37:55 PM

久々に飲もうか 食べようかと
父母の元へゆく
僕ら夫婦と 姉夫婦

久しぶり、なんて感想はなく
ただひたすらに 宴は深まっていく
笑顔の溢れる食卓に こぼれてしまったノンアルコールビール

姉には今年初めに赤ん坊が生まれ
その子は立ちあがろうと 這いつくばろうと
懸命に汗をかいていた

変わりゆくのは 僕らもで
みんな歳をとって
むかし4人で囲んだ白いテーブルは 
多分、物置の中

フィルムカメラの残したアルバムの中、
今もいるキャラクターのパーク
そこで僕らは手を繋いでいた、少し不機嫌だった、
太陽を眩しがっていた、眠っていた

僕らの命と思い出は雷鳴と同じ
だから
遠雷の稲妻に、少し寒気がした

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