人生ゲームが最後まで勝てるか分からないこと
隣の家の晩ごはんの香りが僕の家の庭にも漂うこと
子供のころ遊んだ団地のシーソーの色が塗り変わっていたこと
君の家だと星がよく見えること
貰ったネクタイが思った以上の力をくれること
君と出逢ってから気がついた
君と出逢ってから気がつくことが増えた
なんでもない日常の なんでもないことに
宇宙にとって僕らが死にゆくことは
ちっぽけすぎて何の変化にもならない
だからこそ色んな目の前のことを
思い出に変えられるように
今日も1日を紡ぐ
新しい画用紙 雨の日のプール
苔の生えたジャングルジム
ドの音が出ないリコーダー
どこかへ行ったプリント
目の前がすべてだったあのころ
その楽園は 虚像か想い出か
足の速くなる靴は もう入らない
リコーダーの吹き方さえ 忘却の彼方
蒸し暑い夜 羽毛布団は放り投げて
ウールのコートとは しばしの別れ
(クリーニング屋のクーポンを使った試しがない)
春はどこへ行ったやら 冷蔵庫の温度が上がる
噴水の季節 川へはもう行かないけれど
セミが着々と準備を進めている
最高気温が更新されたと毎年騒ぐテレビ
もっと報じるべきことがあると太陽は嘲笑う
蒸し暑い夜 風に乗って
シティポップが気だるく流れる
ストリーミングでも構わんが
でも真空管 そこにレコード 置いといて
拾った琥珀に 虫が入ってた
アリかクモか はたまたハエか
幸福か不幸か 分からない姿をしていた
宇宙はどんどんと 拡大している
これまでに何人が生まれて 何人が死んだのか
地球はそんなことに無関心で
たぶん むしろ 植物の方が それを気にしている
プラネタリウムの季節が近づく
あのひかりは 何万光年前のものなのか
気づいていたけれど それは偽物だった
衣替えだって 何百回も できないね
刹那
雨が降る 雲が欠けていく
修学旅行の帰りのバス みんなが疲れて寝ていた
カーテンの隙間から見た外
灰色の雲が世界を 食らおうとしていた
その隙間から 雫のように差し込む白い光
誰かが 「天使の階段」と叫んでいた
あれから僕たちも大人になっただろう
木々の雫にも 雲からの光の雫にも
もはや目もくれない日々
雨が降る 欠けていく空
自然は変わらぬと自惚れるなかれ