『秘密の箱』
秘密の箱に詰めてしまった。貴方のこと。
もう目に入れたくはないから、
もう耳に入れたくもないから、
全部隠して見えないようにしようと思って、
箱に詰めてしまったの。
初めはやっぱり開けてしまおうかとも思った。
何度も閉じた蓋を開こうとした。
でもその度に我慢して、我慢して、我慢して、
いつの間にやら開けようと思うこともなくなっていた。
そうして秘密の箱は忘れられた。
秘密を知るたった一人の少女から忘れ去られた秘密の箱は、もう誰の記憶にも残っていない。
箱に詰められた彼の人がどうなったのか、
一体何処に隠されてしまったのか、
誰も何も知る由はない。
『夏草』
君の背よりも高い高い緑を掻き分けて掻き分けて君を探した。
それは一種の隠れん坊だった。
けれどもここで君を見つけることができなければ、
もう二度と会ふことはないだらうといふ気持ちに駆られた。
焦っていた。
かんかんと照る夏の太陽の所為か、
いつまでも君が見つからない所為か、
僕の身体は既に水浴びをした犬の様に濡れていた。
汗が目に入る。口に入る。地面に落ちる。
早く君を見つけてこの腕に抱きたい。
ベタベタになって君は怒るかもしれないけれど、
君の体温ならいつだって感じていたい。
そんな思ひを抱きながら夏草を彷徨った。
『素足のままで』
素足のままで良いから駆けておいで。
踵の痛い靴なんか捨ててしまえ。
邪魔なもの一つない綺麗な道をあげるから、
君はただ力の限り地面を蹴って走り続ければ良い。
『涙の跡』
腫れた瞼
充血した瞳
頬にできた線
ふやけたノート
鼻をかんだティッシュ
君の涙の跡を愛おしいと思った。
一つ残らず保管したいと思った。
涙の跡にラベルをつけて今日の日付を書いておこう。
いつかそれを見返したとき、涙の理由を尋ねるから。
君はそれまでにその感情を言葉にしておくんだよ。
『夏』
上田夏美
夏川なつ
夏生
美夏
冷染麗夏
大場朝夏
晴夏
朝夏金
三好夏造
神江人夏
夏音
これまでに書いてきた、
夏の字を持つ創作キャラの名前。