『秘密の箱』
秘密の箱に詰めてしまった。貴方のこと。
もう目に入れたくはないから、
もう耳に入れたくもないから、
全部隠して見えないようにしようと思って、
箱に詰めてしまったの。
初めはやっぱり開けてしまおうかとも思った。
何度も閉じた蓋を開こうとした。
でもその度に我慢して、我慢して、我慢して、
いつの間にやら開けようと思うこともなくなっていた。
そうして秘密の箱は忘れられた。
秘密を知るたった一人の少女から忘れ去られた秘密の箱は、もう誰の記憶にも残っていない。
箱に詰められた彼の人がどうなったのか、
一体何処に隠されてしまったのか、
誰も何も知る由はない。
10/25/2025, 9:58:03 AM