『星空』
あんなに愛した星々から、
「見たくもない」と目を逸らした
あの日をきっと僕は忘れない。
それは冬の日のことでした。
十八の私は、進路だなんだと
見たくもない現実ばかりを見せられいて、
大変疲弊しておりました。
学校帰り、駅から出た私はふと空を見上げ、
確かにその両目に星空を映したのです。
そこにはいつもの通り、
眩しく輝く星々がおりました。
普段なら「もっとよく見たい」と
瞳孔を開かせていたところです。
けれどその時、私の身体は初めて
星々に対して拒否反応を示しました。
「見たくない」
咄嗟に顔を背けました。
地面を見ながら歩きました。
そんな自分が惨めでなりませんでした。
星々の輝きが眩しくてたまらなかったあの日。
とてもじゃないが見ていられなかったあの日。
あんなに愛した星たちから、
目を逸らしてしまったあの日。
あの日をきっと僕は忘れない。
そうして今日も星空を眺める。
『神様だけが知っている』
例えば自分がいつ死ぬのかとか、
何故この人に出会ったのかとか、
この世に生まれてきた理由とか。
そういうことを知っている者が神なのだとしたら、
私は間違いなく彼らにとっての神なのだ。
しかし、私というのはただの人間で。
この身を組織するものは、
彼らの身を組織するものと大きく異なるわけではない。
それどころか、
私と彼らを同じ次元に置いて見れば、
彼らの方がよっぽど優れた存在なのだ。
とても、申し訳なく思う。
もっと立派な人が貴方たちの神だったなら、
今よりも幸せになれていたかもしれない。
でも残念なことに、貴方たちを生み出したのは僕だ。
自分より劣る者に自分を決められるのは苦痛だろう。
ごめんね。
とはいえ、
このようにして私が彼らのことを考えるということも、
神様だけは知っている筈なのだ。
非常にこの世はマトリョーシカで、
本当の頂点なんて何処にあるのか分からない。
最高神様からすれば、
全てはアスラナスより小さなことなのでしょうね。
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アスラナス……高校生の頃の僕が考えた、
今よりずっと未来で見つかる、
ミジンコよりも小さな微生物。
『この道の先に』
この道の先に何が待っているかは分からない。
分からない?そうだろうか?
この道の先に待つのは死だ!終焉だ!
決して平等には命を与えられなかった僕たちが、
唯一平等に与えられている終わりだ!
今が楽しくても苦しくても、
いつか必ず終わりの日は来る。
永遠なんて存在しないし、
どんなに化け物みたいだとしても私たちは人間だから。
だからあまり死に急ぐなよ。
待ってても必ず迎えに来てくれるから。
今はただ、安心して今を味わおう。
『愛があれば何でもできる?』
どんなに愛があったって、
あなたの気持ちを変えることはできないし、
あなたの未来を変えることもできない。
決して神様には逆らえないのだから。
それでも愛さえあれば、
もしものあなたを想うことはできる。
現実はどうしても変えられない事実だけれど、
私たちは常に現実を生きているわけではない。
夢を見ましょう。
想像しましょう。
妄想しましょう。
私たちはいつだってそれが得意だった。
現実を改変して記憶すれば、
改変された現実こそが真実となるでしょう。
そうやって生きていくしかないのです。
受け入れ難い現実で生きていくためには。
『初恋の日』
[初恋はいつ?]
という項目に見覚えはあるだろうか。
大抵の人はここを空欄にするか、
[ヒミツ♡]などと書いて誤魔化したものだ。
馬鹿正直に初めて恋をした年齢を書く人は少ない。
プロフ帳では割とお馴染みの質問だった。
何故プロフ帳はそんなにも初恋を聞きたがったのか。
何故人々は初恋というものを特別視するのか。
如何なる時も恋は平等に、特別なものなのに。
と、思わなくもないけれど。
確かに初恋は、他の恋とは異なるものなのだ。
恋というものは、
他の『好き』とは異なる『好き』だから。
その特別な感情を初めて手に入れた日のことを
『初恋の日』と呼ぶのだから。
恋を知る前の自分とは少しだけ違う自分になっている。
それが良い変化か悪い変化かは分からないけれど、
特別な『好き』を知ることができたことは、
きっと喜ばしいこと。
多くの恋を楽しみましょう。
その始まりが『初恋の日』。
誰かを何かを特別に、好きになることを覚えた日。