冬山210

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『星空』

あんなに愛した星々から、
「見たくもない」と目を逸らした
あの日をきっと僕は忘れない。

 それは冬の日のことでした。
 十八の私は、進路だなんだと
 見たくもない現実ばかりを見せられいて、
 大変疲弊しておりました。
 学校帰り、駅から出た私はふと空を見上げ、
 確かにその両目に星空を映したのです。

 そこにはいつもの通り、
 眩しく輝く星々がおりました。
 普段なら「もっとよく見たい」と
 瞳孔を開かせていたところです。
 けれどその時、私の身体は初めて
 星々に対して拒否反応を示しました。

 「見たくない」

 咄嗟に顔を背けました。
 地面を見ながら歩きました。
 そんな自分が惨めでなりませんでした。

星々の輝きが眩しくてたまらなかったあの日。
とてもじゃないが見ていられなかったあの日。
あんなに愛した星たちから、
目を逸らしてしまったあの日。

あの日をきっと僕は忘れない。
そうして今日も星空を眺める。

7/5/2024, 5:32:56 PM