冬山210

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5/5/2024, 5:12:24 PM

『君と出逢って』

君と出逢って僕は、僕を生み出したのだと、
いま初めて気付いたのです。


私が文章を書くきっかけとなった、
私を元にして私が作ったあの子。
私の分身であり、半身なあの子。

そんなあの子を作るきっかけとなったのは、
君とした何気ないごっこ遊びだったんだ。

今でも覚えている。場所は近所の公園。
私たちは私たちでない誰かになろうとした。
そして、あの子の名前を考えた。
それが全ての始まりだったんだ。

君とごっこ遊びをするたびに、
私たちは新しい『誰か』を増やし、
それを演じ、交友させることで物語を紡いだ。
君との掛け合いがなければ、
あの子も、他のうちの子も、生まれていなかった。


かけがえのない時間だった。
少なくとも私にとっては、
何物にも変え難い貴重な体験だった。

君じゃなきゃ、ああはならなかったね。
中学生になってもごっこ遊びをするような、
そんな幼稚で楽しい日々を過ごせたのは、
君がいてくれたからだ。

あの子や、たくさんのうちの子、
たくさんの物語を生み出すきっかけとなってくれて、
本当にありがとう。
君と出逢って僕は、今の僕になれた。
全ては君のせいで、君のおかげだったらしい。
今更気付いた。

4/20/2024, 4:37:07 PM

『何もいらない』

クリスマスのプレゼント。
誕生日のプレゼント。

何もいらないと思ったのは、
私が本当に欲しいものを与えられるのは
あなたではないと分かっていたからだ。

私が本当に欲しいものは、
美味しいケーキでも推しのグッズでも、
ライブのチケットでもお洒落な服でも、
ふわふわのぬいぐるみでもない。

私が本当に欲しいものは、
それらを楽しむための
『時間』と『余裕』と『お金』。
どれか一つでは駄目だ。
三つ全て、欲しいのだ。

でもそんなもの頼めない。
あなたが与えられるものではない。
『お金』くらいなら貰えるかもね。
けど、プレゼントに現金を頼むのは良くないって、
流石にそれくらいは分かってるの。

だから、何もいらない。
あなたじゃ私を満足させられない。
気持ちだけ貰っておくね。
そんなもの欲しくないけれど。

4/4/2024, 2:28:44 PM

『それでいい』

人と関わることが苦手で、
対して努力もしてなくて、
そのくせ周りを羨んで。

欠点ばかりを気にかけて、
長所も特技も見出せず、
そのくせ自分を変える気もない。

それでいいのだと呟いた。

自分だけは自分を愛することができるのだから、
ありのままの自分を愛してやればいいのだと。

それがいいとは言えなかった。

現状維持には大賛成だが、
現状に満足はしていなかった。

そういうの全部ひっくるめて、
それでいいと思った。
それがいいとは思えないけど、
今はまだ、それでいい。

3/21/2024, 5:23:41 AM

『夢が醒める前に』

たいへん!たいへん!
急がなくっちゃ!
あの子の夢が醒める前に、
あの子を連れて来なくっちゃ!

美味しいお菓子と楽しいお喋り、
素敵なドレスに愉快な友だち。
あの子が大好きなアップルパイも、
あの子が大好きなレモネードも、
あの子が大好きなものなら何でも揃ってる!

だから早くここに、
あの子を連れて来なくっちゃ!


 現実は時に手厳しい。
 美味しいお菓子も楽しいお喋りも、
 素敵なドレスも愉快な友だちも、
 きっと全ては現実にも存在している。

 けれどもあの子は、
 きっとそこでは、
 大好きなものを手にしても健やかに笑えない。


だから早くここに、
あの子を連れて来なくっちゃ。
あの子の夢が醒める前に。
あの子が僕らを忘れる前に。

子どものままの、
あの子をここへ。

3/2/2024, 1:00:18 AM

『欲望』

生きていて欲しかった。
死なないで欲しかった。
貴方を助けられるだけの力が欲しい。
貴方を守れるだけの力が欲しい。

なんて傲慢だ!お前のエゴでしか無い!
貴方の口から一度でも、
生きていたいと言われたか?
死にたくないと言われたか?
助けて欲しい、守って欲しいと言われただろうか?

生きていて欲しかったのは私で、
死なないで欲しかったのも私だ。
私は私のために貴方の生を求めている。
貴方のことなんてちっとも考えていない。

満足のいく死だったと思う。
貴方はきっと、清々しいほど見事な最期を迎えた。
それの何が駄目なのだろう。
再度の生を貴方は求めていないだろう。

私の願いは不必要である。
ただ花を手向けに行けば良いだけだ。
それだけで良い筈なんだ。

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