『ジャングルジム』
ジャングルジムのてっぺんから落っこちた、
あの子のことを覚えている。
ママたちが悲鳴をあげて駆け寄った。
ミカちゃんのママが救急車を呼んだ。
アオくんのママは私たちを近づかせないようにした。
あの子のママは、ただあの子のそばで泣いていた。
ユウカちゃんのママがあの子のママに声をかけていた。
覚えている。
あの子のママの泣き叫ぶ声。
覚えている。
あの子が地面に落ちた時の音。
覚えている。
……あの子、わざと落ちたんだよ。
ジャングルジムのてっぺんに登るあの子を、
私は遠くから見ていた。
あの子はてっぺんまで辿り着いて嬉しそうだったけど、
ママたちは誰もあの子のことを見ていなかった。
だからあの子は「きゃっ」と小さな悲鳴をあげて、
てっぺんにつけていた足を滑らせたかのように見せて、
地面に打ち付けられにいったのだ。
私はそのことをママに伝えたけれど、
「わざと落ちるわけがない」と信じてもらえなかった。
あの頃からあの子はそういう子だったのだ。
『踊るように』
踊るように桜が舞った。
それを追いかけて子犬が舞った。
ワルツ、ワルツ、子犬のワルツ。
せっかくだからShall we dance?
僕と一緒に踊りましょう。
拙くたって良いのです。
だってこれは子犬のワルツ。
主役は僕らじゃなくて彼ですからね。
さぁ、子犬くん。桜はまだまだ舞ってるぞ。
踊るようにひらひらと。
『きらめき』
何かを観ている時、読んでいる時、聞いている時、
誰だって一度は感じたことがあるだろう。
「私もそれをやってみたい!」
という衝動。
それは憧れ。
自分にないものを羨ましく思う気持ち。
それであり、同時に、大切な『きらめき』でもある。
やってみたい、なってみたい。
きらきらとしたそれは君の中で瞬く。
それを憧れのまま終わらせるのか、
膨らませて夢にするのかは君次第。
『きらめき』は夢の卵である。
簡単には破れない卵が見つかるといいね。
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気づいたら19時過ぎてたけど供養。
『海へ』
海へ行こうか。
ほら、黒いワンピースをあげる。
これを着ておいで。夜の海に紛れよう。
月が映ってる。
海面が揺れている。
波の音が聞こえる。
君は誘われている。
深くへ落ちよう。
海水は冷たくないね。
どこまでも沈んでいける。
呼吸ができなくなったなら、海水を飲めば良い。
あまりの塩辛さに目が覚めるだろう。
そしたらほら、そこがベッドの上だと気づく。
夢なんかじゃないけどね。
『いつまでも捨てられないもの』
小学生の頃から書き溜めてきた創作物。
ただの設定だったり小説だったり会話文だったり。
それらはみんな黒歴史であるとともに、
かけがえのない僕の証なんだ。
小説家の先生はこう言っていた。
「自分にしか書けないものなんてない。
自分に書けるものは大抵他の誰かにも書けるもの。」
世界で自分だけなんてのは有り得ない。
というのが先生のお言葉。
僕はそうは思わなかった。
似通ったものが書ける人はいても、
一言一句同じものを書ける人はいない。
たった一文違うならそれは違うもので、
だから全ての作品は唯一無二なんだ。
私が書いているものは私にしか書けないものだ。
それは昔書いたものもそう。
凡庸で拙いけれど、私は面白いと思ってる。
私という読者を何度だってワクワクさせてくれる。
最高だろう。
だから、いつまで経っても捨てられやしない。
今まで書いてきたもの全て、失くしたくないんだ。
捨てるなんてできないよ。