『ジャングルジム』
ジャングルジムのてっぺんから落っこちた、
あの子のことを覚えている。
ママたちが悲鳴をあげて駆け寄った。
ミカちゃんのママが救急車を呼んだ。
アオくんのママは私たちを近づかせないようにした。
あの子のママは、ただあの子のそばで泣いていた。
ユウカちゃんのママがあの子のママに声をかけていた。
覚えている。
あの子のママの泣き叫ぶ声。
覚えている。
あの子が地面に落ちた時の音。
覚えている。
……あの子、わざと落ちたんだよ。
ジャングルジムのてっぺんに登るあの子を、
私は遠くから見ていた。
あの子はてっぺんまで辿り着いて嬉しそうだったけど、
ママたちは誰もあの子のことを見ていなかった。
だからあの子は「きゃっ」と小さな悲鳴をあげて、
てっぺんにつけていた足を滑らせたかのように見せて、
地面に打ち付けられにいったのだ。
私はそのことをママに伝えたけれど、
「わざと落ちるわけがない」と信じてもらえなかった。
あの頃からあの子はそういう子だったのだ。
9/24/2023, 2:30:04 AM