🐥ぴよ丸🐥は、言葉でモザイク遊びをするのが好き。

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10/11/2022, 2:13:46 PM

068【カーテン】2022.10.11

一日が終わり、カーテンを引き、窓を閉ざして、おやすみなさい。
スイッチを押して灯りを消せば、隙間からさやかな月光。触れられそうな気がして、そっと手をのばしてみる。

10/10/2022, 12:37:33 PM

067【涙の理由】2022.10.10

今年のイグノーベル賞を受賞したのは、

涙の理由がわかる試験紙

だった。なんと涙は涙腺を刺激する感情ごとに、微妙に成分がちがっていて、そこに着目して、尿検査の試験紙のような、複数の種類の試薬を染み込ませた試験紙を開発したのだという。
開発した間宮史明教授によると、教授自身、妻の気持ちを読み取るのが苦手で、しばしば激烈な夫婦喧嘩に発展するのが悩みだったそうで、この悩みを解決するために、パートナーの感情を客観的に測定できるアイテムがあればよいのでは、と考えたのが開発の動機、ということだ。
「自分のように妻の気持ちがうまく汲み取れず密かに悩んでいる男性諸氏の苦悩を軽減し、かつ、夫婦間の感情の行き違いを削減することでパートナー同士の幸福度増進に寄与できたら幸いです」とは、受賞に際しての教授のコメントである。
早くも、イヤイヤ期のわが子のギャン泣きに手を焼くパパママから商品化を熱望する声があがっているというが、そもそものターゲットである倦怠期の夫婦は、むしろ敬遠気味だとか。理由は、涙の本当の理由がわかってしまうのが、お互いにとってこわい、ということだが……真偽やいかに?

10/10/2022, 3:53:37 AM

066【ココロオドル】2022.10.10

ひいきの和菓子屋さんから、また新作が出たというので、私はうきうきしながら買いにいった。こんどの新作は、日常の記念日に和菓子をえらぶ人が増えてほしい、という思いでつくったのだそうで、私は店頭でひと目見て、あまりにも可愛らしかったから、おもわず、全種類大人買いしてしまった。
箱のなかで、かたむいたり、はずんだりしないよう、そろりそろりと持ち帰ってきた菓子箱を、ゆっくりとテーブルに置く。蓋には、少女漫画のようにキラキラとしたフォントとレイアウトで、

ココロオドル

とかいてあった。これが、新作のお菓子の名前。和菓子とはおもえないキャッチーさにつられて、ついつい、ココロオドル、と唇だけ動かしてリフレインしてしまう。リフレインするにつれ、私の期待はワクワクと高まっていく。
お茶の用意ができるやいなや、がまんできなくて、蓋を取った。と、そこには、パステル調のカラフルな練切り。一年十二ヶ月、各月を象徴する花の色をまといつけた、十二個のハート形の練切りが、ちょこんちょこんとお行儀よく、箱のなかにならんでいた。
「……かわいい……」
私はおもわず声にだしてしまった。
そっと、誕生月の、六月のハートをつまみあげた。掌にのせた練切りは、梅雨空の下の紫陽花の、青、紫、赤色で、各色がはんなりとグラデーションになっている。ながめているだけで、梅雨時のしっとりとした空気感や、雨にぬれた紫陽花の重たげなようすが、脳裏によみがえってくるようだった。
形をよくみると、トランプのマークのようにきちんとした左右対称にはなっておらず、ハートにはややひねりがかかっていてた。それがいかにも躍動的で、まるでいましも舞い落ちる花びらのようにみえた。
コンパクトながらもずしりとくるあんこの重みを掌で受け止めながら、私はお茶が冷めてしまうこともわすれきって、いつまでもながめいってしまっていた。

10/8/2022, 11:08:04 PM

065【束の間の休息】2022.10.09

長いのも短いのも、出来のいいのもわるいのも。
此処で毎日なにがしかの文章を書いてきて、2ヶ月。

今回は、お題どおりに束の間の休息をいただきます。
さすがに、毎日書くのはつかれたよ〜(*´Д`;)

10/7/2022, 10:38:25 AM

064【力を込めて】2022.10.07

な、なんということだ……みわたすかぎり、地平線の果てまでぷちぷちシートがひろがっているとは。
湯河原国宏が、ランプの魔神の問いかけに対して、「子どものときから、ぷちぷちをつぶすのがどうしようもなく好きだ」ということを想起していたのは否定できない。そして、夢中になってぷちぷちをつぶしていた幼いみぎりの自分を回想して、あれはなんと楽しいひとときであったか、と恍惚としたのもたしかであった。
それらの想念の合間に、刹那、「つぶしてもつぶしても果てが無い無限のぷちぷちが欲しい」という願望がひらめき、よぎっていたとしても、なんの不思議があろう。

しかし、だ。だからといって、それを直ちにかなえるだなんて、そんなヴァカなヤツがいてたまるかよッ!

力を込めて眼下のぷちぷちをつぶしながら、湯河原はいきどおっていた。たのしいかって? たのしくないわけがないだろう! といきどおりながらも夢中になってつぶしていた。とはいえ、どこまでつぶしても果てがこない大量のぷちぷちに、さすがに指が痛くなってきたのも事実である。

ならば、だ。ふたつ目に魔神に願うとしたら、いくらぷちぷちをつぶしても痛くならない指、か?

湯河原は困惑した。困惑しながら、なおも指に力を入れてぷちぷちをつぶしつづけていた。
結局、なんだかんだいっても、つまりは、単純に、ぷちぷちをつぶすのが、好きで好きでたまらなかったのであった。

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