題.快晴
あの白色の奥にある、群青色が
恋しくてたまらない。
いつになったら晴れるだろうか。
題.遠くの空へ
はやく、もっとはやく。
あの子がいる街まで。急がないと。
浅葱色の翼はまだ上手に扱えない。
慌ただしく、空を飛ぶ鳥なんて
地上の人間には珍しいだろう。
風を切る音が物足りなくて
もう一度、羽根をふるわせる。
あの子に伝えたいことが山ほどある。
生まれたばかりのこの身体に溢れる、
文章にもほど遠い思いの丈を
あの子に届けなければ。
林檎色のほっぺが脳内をよぎる。
限界を超えてしまう心臓の音がする。
私は「幸せの青い鳥」だ。
悲しみを飛ばす夜明けじゃなくて、
幸せを降らす雨にならなければ。
題.言葉にできない
「またオフコース、聴いてるの?」と聞くと
「別にいいじゃん」とそっぽを向かれた。
言葉にできないことなんて、僕のほうが多いのに。
題.春爛漫
「あなたにとって、恋の色はなんですか」
ピンク色、黄色、緑色、青色。選択肢の中に僕が思う恋の色がなくて、スマホの画面から目を逸らして、机に突っ伏した。
僕に、心理テストは向いてない。
僕にとっての恋の色はピンク色でも、黄色でも、緑色でも、青色でもない。どんな色も違う。そもそも色なんて付いていない。
最初に質問を見たとき、僕が浮かんだのは白色だった。
君が嬉しそうに笑っていると、僕も嬉しい。君が悲しそうに泣いていると、僕も悲しい。
そうやって僕の白色に、君が勝手に色を塗りたくっている。君が赤色だったなら僕も赤色、君が青色だったなら僕も青色になるだろうと思った。
ひとつだけ例外を除けば、僕は従順な白色だ。
そんなことを想像してから、ふと窓の外を見ると桜の花びらが柔らかく、宙を舞っていた。
「足りない……」
空気の冷たさがひっこんで、陽光の暖かさを実感するようになったけれど、僕には春も、夏も、遠く感じる。
僕には、流れる桜の花びらも季節外れに思えた。
題.誰よりも、ずっと
あなたを好きだと云う誰よりも、
ずっと
あなたを好きなのは
あなた自身でいること。