題.春爛漫
「あなたにとって、恋の色はなんですか」
ピンク色、黄色、緑色、青色。選択肢の中に僕が思う恋の色がなくて、スマホの画面から目を逸らして、机に突っ伏した。
僕に、心理テストは向いてない。
僕にとっての恋の色はピンク色でも、黄色でも、緑色でも、青色でもない。どんな色も違う。そもそも色なんて付いていない。
最初に質問を見たとき、僕が浮かんだのは白色だった。
君が嬉しそうに笑っていると、僕も嬉しい。君が悲しそうに泣いていると、僕も悲しい。
そうやって僕の白色に、君が勝手に色を塗りたくっている。君が赤色だったなら僕も赤色、君が青色だったなら僕も青色になるだろうと思った。
ひとつだけ例外を除けば、僕は従順な白色だ。
そんなことを想像してから、ふと窓の外を見ると桜の花びらが柔らかく、宙を舞っていた。
「足りない……」
空気の冷たさがひっこんで、陽光の暖かさを実感するようになったけれど、僕には春も、夏も、遠く感じる。
僕には、流れる桜の花びらも季節外れに思えた。
4/10/2023, 2:26:45 PM