彼はいつだって秋の匂いがする。
甘いキンモクセイの匂い。
春だって夏だって冬だって、彼の周りは年中秋だ。
だから彼がいる場所はすぐに分かる。
甘い匂いが風に乗ってやってくるから。
私の大好きな匂いがするから。
だから秋が嫌いだ。
彼がいなくても秋の匂いが風に乗ってやってくるから。
キンモクセイが嫌いだ。寂しくなるだけだから。
秋はいつだって君の残香がする。
作者の自我コーナー
キンモクセイのハンドクリームが好きです。だいたい期間限定なので常に探してます。校庭の匂いがするんですよね。
作者の自我コーナー番外編
多幸感なんて言ってはみるけど、やっぱり美味しいご飯を食べてる時が一番幸せだと思う。みんなで食べるもいいけど、
一人で噛み締めて味わうのも好きだ。
和食を食べているとどこぞの古本屋よろしく『日本人で良かったよ〜!!』と叫びたくなる。
そしてこうも思う。大口開けて食らいたいと。
胃が弱くなってしまったので実際バクバクとがっついてしまうとあとが大変なのだが、つい癖でスプーンに山盛り一杯のカレーを頬張ってしまうし、茶碗のご飯を掻き込んでしまう。
きっと美味しいと感じる食べ方があるのだと思う。ちまちまお上品に食べるより行儀が悪くても口いっぱいに頬張りたい。口の中を美味しさで満たしたい。いっぱいにした分、胃に入る量もいっぱいなのでかなり消化には影響があるが、それも厭わない。悦楽を文字通り味わいたいのだ。
たとえそれが刹那的だとしても。
『刹那的快楽主義者』
お目汚し失礼しました
作者の自我コーナー番外編
『生きる意味』
あまり考えていません。まだまだ生きるつもりなので、
こう、と決めてしまうのはもったいない気がします。
なんせ、『実存は本質に先立つ』のですから意味を求めるのはいつだっていい。急ぐ必要は無い、私を思う存分楽しんでからでもいい。
あ、『私を楽しむこと』が『生きる意味』でもいいですね。
そうしようかな、とりあえず今は。
自分で決めることだから、何回変えたっていいですからね。
話は変わりますが、現代文の教科書に載っていた『おまえは自分が生きなければならないように生きるがいい』という文が、ずっと心に残っています。そういうことなんでしょうね。
思うままに、望むままに自分を全うしたいものです。
お目汚し失礼しました。
引用元『レオーノフの帽子屋』
ただ好きなだけやのにな、なんで邪魔されなあかんのやろう。
俺はあいつが好きで、あいつは俺が好き。それだけ。
好きやから、愛し合ってるだけ。触れたかったから、触れた。
その薄い唇に、その少しニキビができた頬に、やんわりと割れた腹筋に、スラリと伸びた脚に、まだ誰にも汚されていない身体に。俺を求める甘く掠れた声が愛おしくてしゃあないだけやのに。
ーー神様、俺たちが何をしたって言うんですか。
愛した人がただ、家族だっただけやんか。
「きみが、きみじゃなかったらよかった……っ」
そんなんあいつに言わせたくなかった。
「次はしあわせになろうな、しんご」
これで誰も邪魔出来ない。俺たちだけのハッピーエンド。
『善悪』
(唯、愛があっただけ)
作者の自我コーナー
いつもの。ふたりはどうなってしまったんでしょうね。
こういうお題って説教くさくなりがちなので、そうならないように全く文章中では触れないようにしました。
タイトルから何となく香ってくれればなと。
テレビではニュースが流れている。
今日がこと座流星群が見られるピークの日なんだそうだ。
道理で彼女がベランダにいる訳だ。
「あ〜んまた言えなかったぁ…」
「何が?」
「ねがいごと!」
次は絶対言い切るんだからと意気込む彼女。
そんな彼女は今年で26歳になる。
純粋でかわいらしいというか、心配というか。
詐欺なんかに引っかからないかしらこの子。
そんなことはさせないが。友人曰く、俺はセコムらしいので。
「淳ちゃんはお願いしないの?」
「無駄なことはしない主義なの。3回なんて無理難題突きつける時点で叶えられないって言ってんのと一緒でしょ」
「その無理難題を超えるからのご褒美でしょ〜?夢がないなぁ淳ちゃんは」
「で?君はどんなご褒美がほしいの?」
「それはぁ………言っちゃったら叶わないでしょ!」
「それ初詣とかのことでしょ。さっき口に出してたでしょうが、俺は聞いてないけど」
それとも、俺に言えないようなことだったり?
いやいやまさか、彼女が俺に隠し事なんて。
全部俺に報告してくれるのに。ここで言っておきたいのは、
俺が把握したいとか、束縛してるとかではない。
むしろそういうのは嫌いだ。
どちらかと言えば、彼女の方が母親に今日あったことを話したがる子どもみたいな感じだ。
「星には言えるのに、俺には言えないの?現実的な願いなら俺に言った方が適していると思うけど」
「う……だって本人なんだもん。『これからも淳ちゃんと一緒にいれますように』ってお願いしてたんだもん!」
ぎゅっと拳を握りしめて声を上げる彼女。かわいい。じゃなくて、だったらなおのこと俺に言う話だ。
彼女と一緒にいるのは星ではなくて俺なのだから。それを継続させるのも俺だ。
「どうせ言うなら、もっと別のお願いにしたら?だってそれは俺が叶えることでしょ?というか、離れる気ないから叶ってるし」
君が俺に飽きるまではだけど、と付け足すと彼女はブンブンと首を横に振った。
「そんなことない!そんな日こない!淳ちゃんがいなきゃ私ダメな子だもん!」
「はは……それはそれで困るんですけど」
『流れ星に願いを』
「一緒、っていったもんな…これで、ずっと叶えられる…ッ」
(流れ星なんかじゃ、叶えられない願い事)
作者の自我コーナー
最後は完全なる蛇足ですね。
めちゃくちゃ彼女が大好きな彼氏(自覚なし)と天然純粋培養彼女。周りが引くぐらいの独占欲を持ってる自覚がない彼と全く気づかない鈍感な彼女です。言動に重さが滲み出てる。