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3/30/2023, 12:54:15 PM

何気ないふりをして、君は今日も笑っている。

何気ないふりをして、君は昨日は泣いていた。

何気ないふりをして、君は明日を生きている。


何気ないふりをしておきながら、君は一昨日死んでいた。
なのに、何故みんな気付かない?死人が生き返っていることに、何故みんな驚かない?

「君は…誰だ」

「あなたこそ、何故気付かないの?みんな、取り繕うのに必死なの。何時もの日常を、死んでも尚守っているってことに、何故気付けないの?」

死んでいたのは、僕も同じ…?



「ー速報でお伝えします。一昨日の夜発生した交通事故による死者が35人となりました。よって、バスに乗車していた乗客全員の死亡が確認されたこととなりました」

#何気ないふり

3/29/2023, 11:56:33 AM

ハッピーエンドを迎えたならば、きっと他の誰かはバットエンドを迎えているのだろう。みんながハッピーな世界は、なんというか宗教的な禍々しさを感じてしまう。
「そんな訳ないじゃない。禍々しくなんてないわ、みんなが笑顔で最後を迎えるなら、それが一番幸せでしょう?」

世界に突如として現れた笑顔をこよなく愛する宗教。
「幸福正義協会」皆がハッピーエンドを迎え、常に笑顔でいることを正義とするその考え方に、僕は反対した。

「…確かに、人は楽しかったりすると笑顔になります。でも、それを正義という概念で縛っていいってもんじゃない。それに、人が人として成長するには、楽しい以外の感情を、ハッピーエンド以外の結末を知ることも必要なんです」
「分からないわ。楽しい事、好きな事を永遠にしていたい。笑顔の絶えない未来を築きたい。そう願ったのは、紛れもない私たちでしょう?」
「そう…ですね。楽しい時は一瞬で過ぎ去ってしまうことに苦言を呈したこともあります。でも、その時に留まっていては、一向に前に進めませんよ。家族と、恋人と、友達と、ライバルと、苦楽を共にして、成長するのが人生ってものの醍醐味じゃないんですか」
「…矛盾してるわ。」

その言葉を待っていた。思わず、僕の口角が上がる。

「分かっているじゃありませんか、あなたも。そうです、矛盾だらけなのです。人なんてそんなものです」

背中に隠したナイフを構える。

「僕は言いました。人は楽しいと笑うと」

「…ねぇ、あなた今、何が楽しくて 笑ってるの? 」

「知っていますか。人は、悲しくても、笑うんですよ」
構えたナイフで、死角から女の腹を突き刺す。こんな宗教、広まってたまるか。人が笑顔になるのが正義だと?
違う、間違っている。人は悲しい時だって、例えば心配かけまいと、例えば誰かの為に、笑顔を尽くす。

「悪役として、バットエンドを迎えるのは、僕だけでいい」
誰かの、ハッピーエンドを守るために。

#ハッピーエンド

3/28/2023, 2:02:59 PM

人の視線というものは様々な色や意味を持ちます。見つめられて、怖くなる者や、嬉しくなる者がいるように。それはきっと、見つめてくる相手によって変わるのでしょう。例えば、試験監督に見つめられれば怖いし、好きな人に見つめられれば嬉しかったり恥ずかしかったり。
そんな中でも私がいちばん怖いのは、鏡越しに見つめてくる私自身です。時々、本当に目が離せなくなる時があります。この見つめてくる私は、他人なんじゃないかと。そんなことは無いと頭では理解しているのですが、やはりどうにも気味が悪くて仕方ありません。まるで、底なし沼のようで。自分とは何かと考え始めると頭が宇宙になるあの感覚と同じです。…ちょっと分かりにくかったでしょうか。まぁ何はともあれ、結局人は自分だけという訳です。人生の中で、確かに人と関わり沢山の経験や感情、思い出を得ることでしょう。されど、それらを全て合わせられたのが自分なのです。現実では、ソレはヒトとして体を保っています。しかし、鏡という空間では果たしてどうでしょうか。一見、ただの自分でしょうが、その瞳の奥に、今まで関わってきた人の目が、こちらを見つめ返している気がしませんか…?私は、ソレがどうしようにもなく怖いのです。鏡に映る私の瞳の中の、無数の記憶達が、こちらを見つめているようで。

#見つめられると

3/27/2023, 2:21:27 PM

本当に苦しい時、胸が痛くなる。辛くて辛くて、しんどくて、「なんで、どうして私だけ」とムカついて、他でもない自分に対する怒りが私を強く殴る。
苦しむ人を前にすると、人はよく言う。
「話してごらん?」と。
話したところで何になると言えば、
「吐き出したら、楽になるかもよ?」と言う。
ふざけるなよ、話すためにはまず全部を思い出さなきゃならねぇんだ。それが、どれだけ苦しいか。
話し終わると大体の人が言う。
「そう、よく話してくれたわ。今までよく頑張ったわね。」と。
うるせぇよ、お前に、私の何が分かる。そういうのは、人を助けた気になって、優しい言葉をかける自分が優越感に浸りたいだけだろ。良い人に、なりたいだけだろ。

あぁ、まただ。胸が痛くなってきた。その痛みを解消する方法が泣き叫ぶしなかいってのも皮肉なもんだ。
叫ぶ。
喉が、いたい。

#My Heart

3/26/2023, 10:15:12 AM

漫画の主人公のように、かっこよくなりたい。それこそ、全身全霊をかけて誰かを守り抜くような。体を張って誰かを守って、誰かの為に怒ったり泣いたりできるようになりたい。

誰かに言われた。
「ないものねだりだな」
…確かにそうだ。叶いっこない。こんな僕に誰かを守るなんて、守られてばっかの僕にできっこない。

誰かが言った。
「でも、今まで守られてきたと思うなら、守り方は分かってるんじゃない?」
…そう、だな。守り方は知ってる。なら、僕は、一体、誰を守れるというのだろう。

また同じ声が聞こえた。
「あなたを今まで守ってきた人は、きっとあなたに笑顔を見せていたはず。じゃあ、その人の背中は、見たことがある…?」
ない。守ってくれていたあの人は、僕に背中なんか見せずに、いつなんどきも大丈夫だよと笑ってくれていた。

あの人の声が聞こえた。
「大丈夫、大丈夫だよ。きっと、大丈夫」
その時、僕は初めてその人の背中を見た。息を呑んだ。
あぁ、そうか。この人は、僕に大丈夫だよ笑うと同時に、いく千もの矢が刺さる自分にも、大丈夫だと、言い聞かせていたんだ。

僕は言った。
「僕はあなたを、全身全霊をかけて守り抜きます。だからいつか、僕を漫画の主人公みたいだと褒めてくださいね」
ないものねだりも上等だ。叶いっこないと守られてばっかの自分を変えられるのは、自分だけだ。大丈夫。きっと、大丈夫だ。

#ないものねだり

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