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漫画の主人公のように、かっこよくなりたい。それこそ、全身全霊をかけて誰かを守り抜くような。体を張って誰かを守って、誰かの為に怒ったり泣いたりできるようになりたい。

誰かに言われた。
「ないものねだりだな」
…確かにそうだ。叶いっこない。こんな僕に誰かを守るなんて、守られてばっかの僕にできっこない。

誰かが言った。
「でも、今まで守られてきたと思うなら、守り方は分かってるんじゃない?」
…そう、だな。守り方は知ってる。なら、僕は、一体、誰を守れるというのだろう。

また同じ声が聞こえた。
「あなたを今まで守ってきた人は、きっとあなたに笑顔を見せていたはず。じゃあ、その人の背中は、見たことがある…?」
ない。守ってくれていたあの人は、僕に背中なんか見せずに、いつなんどきも大丈夫だよと笑ってくれていた。

あの人の声が聞こえた。
「大丈夫、大丈夫だよ。きっと、大丈夫」
その時、僕は初めてその人の背中を見た。息を呑んだ。
あぁ、そうか。この人は、僕に大丈夫だよ笑うと同時に、いく千もの矢が刺さる自分にも、大丈夫だと、言い聞かせていたんだ。

僕は言った。
「僕はあなたを、全身全霊をかけて守り抜きます。だからいつか、僕を漫画の主人公みたいだと褒めてくださいね」
ないものねだりも上等だ。叶いっこないと守られてばっかの自分を変えられるのは、自分だけだ。大丈夫。きっと、大丈夫だ。

#ないものねだり

3/26/2023, 10:15:12 AM