「永遠に愛してる」
「永遠に一緒だよ」
人はよく「永遠」を語りたがる。
人はいつか必ず死ぬことを解っているのに。
永遠などないことを知っていながら語るのだ。
つまりは気持ちだけ、永遠を望んでいる。
気持ちなんてすぐに変わるのに。
君から「好き」を告げられた時はロマンチックな雰囲気などそっちのけでこんな風に考えたものだ。
私ももちろん君と一緒に居たいと願っていたよ。
だからまだ理解できないんだ。
私よりも想いの強かった君が私の隣にいないことが
どうしても理解できないんだ。
なぜ君の宇宙よりも大きな想いは、肉眼で見ることも出来ないような小さな病に負けてしまったのか。
永遠に理解なんてできない。
No.4【永遠に】
私は行事で乗るバスが好きで、特に帰りのバスがたまらなく好きだった。
日が落ち始めた景色は行きの景色と変わってないにも関わらず全く別の美しさを放っている非日常の雰囲気が好きだった。
みんな疲れきって寝てしまっているのに自分だけ起きていることに何故かちょっとした優越感を感じて。
思い出は美化されると言うけれど、美化する前の状態を思いだす術は無い。思い出すぐらいなら美化された思い出にただ浸っていたい。
No.3【懐かしく思うこと】
「何見てるの?」
女はスマホを見ている男にそう尋ねる。
「ゆうちゃんの写真だよ。」
自身の写真を見ていると理解した女は
「私の写真か〜。ふふ。」
と嬉しそうに笑った。
「何見てるの?」
抱きついてきた目の前の君は画面の中が気になるらしい。少し焦っていることを悟られぬよう、俺は静かにスワイプして女の画像から君の写真に切替える。
「ゆうちゃんの写真だよ。」
少しの間。
「私の写真か〜。ふふ。」
悟られていないようで内心ほっとした。
彼女が扱いやすくて良かった。
俺のプライドのために付き合った彼女には、俺に本当に好きな女がいることがバレては困るのだから。
「何見てるの?」
私は純粋な疑問をなげかける。
「ゆうちゃんの写真だよ。」
彼は嘘をついた。あなたの目に私はうつっていなかった。
「私の写真か〜。ふふ。」
私は上手く笑えているだろうか。純粋な女の子を演じられているだろうか。
彼が他の子が好きなことを私は知っている。それなのに私はまだ本気で彼のことを好いている。
だから私は何にも気づかない扱いやすい女の子をずっと演じている。これまでも、これからも。
ーーーあなたのそばにいるために。
No.2【もう1つの物語】
がしゃーん!
部屋に響く鋭い音。それは床に叩き落とされた食器が発した音だった。
「うるせえって言ってんだろ。」
鋭い眼光でこちらを見やる男の姿は数年前と比べて随分と変わったようだった。男の子と呼ぶには大きくなりすぎた背、何も容姿のことだけでは無い。
心もここ数年で悪い方向へと大きく変化してしたようで。
しかし、いわゆる反抗期とは訳が違うらしかった。最初は学校を休みがちになり、その後あまり外へ出たがらなくなり、遂に部屋からもほとんど出ることがなくなって今に至る。
理由は絶対に教えてはくれない。だからこそ彼の抱える闇は大きくなり続けここまで来てしまったのだろう。
ああ、いつか私は暗がりの中にいる貴方を照らすことが出来るのだろうか。正解のない問を私はずっととき続けている。
そんなことをかんがえながら落ちた食器を片付けるのだった。
No.1【暗がりの中で】