「何見てるの?」
女はスマホを見ている男にそう尋ねる。
「ゆうちゃんの写真だよ。」
自身の写真を見ていると理解した女は
「私の写真か〜。ふふ。」
と嬉しそうに笑った。
「何見てるの?」
抱きついてきた目の前の君は画面の中が気になるらしい。少し焦っていることを悟られぬよう、俺は静かにスワイプして女の画像から君の写真に切替える。
「ゆうちゃんの写真だよ。」
少しの間。
「私の写真か〜。ふふ。」
悟られていないようで内心ほっとした。
彼女が扱いやすくて良かった。
俺のプライドのために付き合った彼女には、俺に本当に好きな女がいることがバレては困るのだから。
「何見てるの?」
私は純粋な疑問をなげかける。
「ゆうちゃんの写真だよ。」
彼は嘘をついた。あなたの目に私はうつっていなかった。
「私の写真か〜。ふふ。」
私は上手く笑えているだろうか。純粋な女の子を演じられているだろうか。
彼が他の子が好きなことを私は知っている。それなのに私はまだ本気で彼のことを好いている。
だから私は何にも気づかない扱いやすい女の子をずっと演じている。これまでも、これからも。
ーーーあなたのそばにいるために。
No.2【もう1つの物語】
10/29/2024, 10:52:39 PM