こはる

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3/9/2025, 1:51:33 PM

嗚呼こんなことするんじゃなかった
嗚呼こんな人もういやだ
嗚呼なんて素敵なの!

鳥のように騒ぐ心

呼びたいと思ふ心

2/24/2025, 2:19:07 PM

一輪の花がある。
道路に置かれた一輪の花だ。
愛らしい少女が居た。隣の家に住んでいる少女は、とても礼儀正しく優しい子だった。
もうあの頃の君は何処にも居ない。
もう伝えられない、愛の言葉を。道路に咲く一輪の花を摘んで水の入ったペットボトルに挿す。
「愛してました……」
「あら?***さん?」
目を見開いた。チョコレート色が光に反射して黄金に輝いていて目に焼き付く。
「もしかして……」
少女は僕の同級生だった。
そして、僕の初恋でもあった。彼女はきっと僕の事など覚えていないだろう。
友達ですらないかもしれない。
単なる知り合いだと思われていたかもしれない。
それでも、僕は覚えていたのだ。
何故なら彼女は僕を助けてくれた恩人だ。

いじめっ子集団に囲まれていた僕の目の前に立って恥ずかしくないのかと怒った彼女は、嘗て夢に見たヒーロー番組の主役のようで、憧れた。
同時に情けなくもなった。その後、彼女と登下校を共にするようになって、彼女が一輪の花を指さして言った。
「私、この花が好きなの」
そう言った時の彼女の顔が、とても可愛らしくて、どきり、と胸が鳴った。僕は歯を食いしばる。彼女に守られてばかりではいけないと思った。
習い事を始めたのはそれからだ。強くなって、漸く一人前と認められた頃だった。
僕は彼女の好きな勿忘草を摘んで告白しようと決心した。直後だった。彼女の転校を聞かされたのは。

こんなちっぽけな花でも喜んでくれるだろうか。
強くなった自分を認めてくれるだろうか。
あの日のお礼を今更だと言われてもしたかった。
別れは突然で、受け入れられなかった。今生の別れでもないのに次会える保証はなくて、今見ても彼女は僕のこと分かってくれるだろうかと不安になる。

そんな日々をもう何年も続けた後だった。
ようやく君と再会できたのだ。彼女は愛らしい少女から美しい女性へと変わっていた。
すらりと伸びた長い脚、ほっそりとしたシルエットは女性らしさを際立たせている。
そう。あの頃の君はもうどこにもいなかった。
「好きです、好きです……」
随分と変わってしまった。お互いに。
それでも変わらないものもある。
あの頃の弱い僕ではないのに声が震えた。
彼女の優しい笑顔はあの頃のままだ。
「どうか、僕と付き合ってください」
必ず幸せにする。何からも守ってみせる。
君が嘗てそうしてくれたように。
驚いた目をして、彼女はすぐ微笑んだ。
「喜んで」
覚えていてくれていた。嬉しかった。
単なる知り合いでも、友達でもないのだ。
今日、君と僕は恋人になった。

2/17/2025, 2:16:37 PM

輝き、何を思い浮かべるだろう。
ある人はショーケースの中の人形、
ある人はアクセサリーを身に着けたマネキン、
ある人は店頭に並ぶ金箔を乗せたチョコケーキ、
ある人は、ものですらなく思い出を輝きと評するかもしれない。輝き、この一言に人々は沢山のものを詰め込む。

子どもにとってのキラキラしたビー玉
ぬいぐるみのくるりと愛らしい目ん玉、
アイドルを照らすスポットライト。

子供時代は大人になったら心までオトナになるのだと信じてた。だけど実際はあんまり変わらなくて、私は今日も心を輝かせながら買い物に出る。

2/16/2025, 4:51:21 PM

時よ止まれ。昔の人が言った。
私はその意味がよく分かってなかったのだ。
ネット普及した現代、指先はタップとスライドに忙しく大多数の人間が目の前よりスマホを見る時代。
ソレはある種のまやかしであり、時を大事にしない行為の一つだと気付いたのは先日。

昔ながらの幼馴染が事故で死んだ。
雪の日のスリップで車にひかれて、そのまま。
誰かを庇ったわけでもなく赤信号を通ったわけでもなく突然に訪れた。道行く人々は素知らぬ顔で、あるいは野次馬根性で周りに湧いた。
「事故ですって」
「若いのに可哀想」
ひそひそ、ひそひそ。
やけに雪の感触が重く感じて、雪が溶けて涙を覆い隠してくれるのだけが救いだった。
さっきまで笑って話してたのに
明日また遊びに行こうねって言ってたのに
暖かな指先は、いまや氷のように冷たく、
なんでもっと私は彼との時間を大切にしなかったのかと過去の自分を恨んでも仕方ないのに、そうせずには居られなかった。
関節も何もかもが人ではありえない方向に曲がり、血塗れの彼は最早たんなる肉塊だった。
「なんで」と言うこともできず、現実を受け入れることができず、私は想った。

ソコから先の時間など来なくてもいい、
彼の居ない未来など必要ない。
人には誰にだって大切な人がいるだろう。
大切なことは全て君が教えてくれた
彼が笑っている時間に戻ることができたなら、その時に、私は願うだろう。

時よ止まれ、と。

12/23/2024, 1:26:39 PM

こんな時期にプレゼントをくれるような友達も恋人もいない

__施設内、
寒い夜空のした独り言ちる。
「今日はクリスマス・イブですって」
「あらまあ、ケーキ買わないとね」
突然話しかけてきた婆さんは窓の外の積もりきった雪をみるなり、苦笑いを浮かべてクツクツ笑う
抜けた歯を怖気づくこともせずニカッとみせて。
「ホワイト・クリスマスになるかもしれないわね」と隣の白髪交じりのおばさまが、冗談めかして言う。婆さんの知り合いなのだろう。
けれど婆さんは、有り触れた着こなし、どこにでも売っている服。有り体にいえば、野暮ったいのだ。

正反対とも言えるような黒い帽子に白いポンチョ、レースのスカート。その風貌はマダムというに相応しい。気品とミステリアスな雰囲気を纏い、妙な説得力を生む。長年の経験によるものか。
まだ外観がすこしは見えていたというのに、今朝と違ってすっかり雪に染まった外の世界は一面まっしろ。さくさく音をたてて歩くたびに残っていく跡。

イルミネーションで派手に飾られたツリーを見る程の時間もゆとりも無ければ、遊びに誘うような人も居ない。でも私はそんな生活が結構、楽しかったりする。
「さ、風邪をひくと良くないわ。窓から離れてコタツにでも入って、ゆっくりケーキでも、ね」
サンタ様が贈ってくれるようなプレゼントをもらう年齢は通り過ぎ、独身であることを虚しくさみしく思ったことはない。

楽しい思い出。
それこそが何より素晴らしいプレゼントなのだ。
幸せの形は人それぞれなのだから。

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