こはる

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時よ止まれ。昔の人が言った。
私はその意味がよく分かってなかったのだ。
ネット普及した現代、指先はタップとスライドに忙しく大多数の人間が目の前よりスマホを見る時代。
ソレはある種のまやかしであり、時を大事にしない行為の一つだと気付いたのは先日。

昔ながらの幼馴染が事故で死んだ。
雪の日のスリップで車にひかれて、そのまま。
誰かを庇ったわけでもなく赤信号を通ったわけでもなく突然に訪れた。道行く人々は素知らぬ顔で、あるいは野次馬根性で周りに湧いた。
「事故ですって」
「若いのに可哀想」
ひそひそ、ひそひそ。
やけに雪の感触が重く感じて、雪が溶けて涙を覆い隠してくれるのだけが救いだった。
さっきまで笑って話してたのに
明日また遊びに行こうねって言ってたのに
暖かな指先は、いまや氷のように冷たく、
なんでもっと私は彼との時間を大切にしなかったのかと過去の自分を恨んでも仕方ないのに、そうせずには居られなかった。
関節も何もかもが人ではありえない方向に曲がり、血塗れの彼は最早たんなる肉塊だった。
「なんで」と言うこともできず、現実を受け入れることができず、私は想った。

ソコから先の時間など来なくてもいい、
彼の居ない未来など必要ない。
人には誰にだって大切な人がいるだろう。
大切なことは全て君が教えてくれた
彼が笑っている時間に戻ることができたなら、その時に、私は願うだろう。

時よ止まれ、と。

2/16/2025, 4:51:21 PM