こんな時期にプレゼントをくれるような友達も恋人もいない
__施設内、
寒い夜空のした独り言ちる。
「今日はクリスマス・イブですって」
「あらまあ、ケーキ買わないとね」
突然話しかけてきた婆さんは窓の外の積もりきった雪をみるなり、苦笑いを浮かべてクツクツ笑う
抜けた歯を怖気づくこともせずニカッとみせて。
「ホワイト・クリスマスになるかもしれないわね」と隣の白髪交じりのおばさまが、冗談めかして言う。婆さんの知り合いなのだろう。
けれど婆さんは、有り触れた着こなし、どこにでも売っている服。有り体にいえば、野暮ったいのだ。
正反対とも言えるような黒い帽子に白いポンチョ、レースのスカート。その風貌はマダムというに相応しい。気品とミステリアスな雰囲気を纏い、妙な説得力を生む。長年の経験によるものか。
まだ外観がすこしは見えていたというのに、今朝と違ってすっかり雪に染まった外の世界は一面まっしろ。さくさく音をたてて歩くたびに残っていく跡。
イルミネーションで派手に飾られたツリーを見る程の時間もゆとりも無ければ、遊びに誘うような人も居ない。でも私はそんな生活が結構、楽しかったりする。
「さ、風邪をひくと良くないわ。窓から離れてコタツにでも入って、ゆっくりケーキでも、ね」
サンタ様が贈ってくれるようなプレゼントをもらう年齢は通り過ぎ、独身であることを虚しくさみしく思ったことはない。
楽しい思い出。
それこそが何より素晴らしいプレゼントなのだ。
幸せの形は人それぞれなのだから。
12/23/2024, 1:26:39 PM