浜辺 渚

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2/27/2025, 2:47:23 PM

「ねえ、私たちってキュートって言葉使うじゃない?あの子ってキュートよね、みたいに。でも、キュートの言葉の意味って可愛いでも綺麗でも無いじゃない?どういうニュアンスが正解なのかしら」
「ニュアンスはよく分からないけど、個人的には抜け目のない魅力っていう意味で使うね。実際に、cuteの語源はacuteで賢い、鋭い、抜け目のない、みたいな意味だったんだ。それが、アメリカお得意のスラングでcuteの省略系と共に可愛いという意味が付与された。つまり、cuteにも抜け目のない、みたいな意味合いは含まれてると思うんだ」
「でも、それってアメリカの話でしょ?アメリカのcuteと日本で使われてるキュートはまた別の表象を持っていると思うわ。dietとダイエットみたいにね」
「それもうそうかもしれない。それなら、キュートという言葉はある意味でここでは新入りなんだし、日本人である君が勝手にニュアンスを決めてもいい気がするけどね」
「そうかもしれない。きっとそうだわ」

2/26/2025, 4:44:22 PM

色々なものに僕の記録が残っている。まるで、僕という存在を等分して細かく分けたみたいに、色々な痕跡が散らばっている。
メディアに1度出てしまったら、もう元の生活や感覚では生きられない。そこには、記録があり、人々の記憶がある。そして、後者は衰えていくものの、前者は親切な墓荒らしのように周期的に掘り起こしてくる。自分が知らない人間に、知られている怖さはある種の人間のコミュニティ形成の限界から来るものであり、それに慣れが生じることは無い。冷静になると、あまりの状況の面妖さに頭がおかしくなってしまうため、我々はいつだって狂気を持っていないといけない。
今日もまた、自分の1部を無機質なデータに置換していく。もはや、自分というのが残っているのかも分からない。都市伝説のように、僕は他人の記憶によって作られているんだ。

2/25/2025, 3:26:09 PM

まずは、自室を出る。これは何回も練習した。そして、えーと、そう1階に降りるんだ。階段を降りれば、すぐ玄関があるはずだから、そこで靴を履く。一旦、深呼吸しよう。ふぅ…。よし、まずはここまでを目標として、もし問題なくこれが達成出来たら大満足。出来なかったら、また明日でも明後日でも頑張ろう。時間はあるんだ。ある作家が言うよに、時間を味方につけるんだ。でも、これは本当に出来すぎな妄想なんだけど、もしそのまま戸口を飛び越えることが出来たら、家の外に足を踏み出せたなら、それっていうのはどんな気持ちがするんだろう。昔の記憶だけど、空気とか温度とかは家と外じゃかなり変わると思うし、きっとそれは気持ちいいことだと思うな 。でも、これは本当に色々なものが鍵穴みたいにはまればの話で、当面の意識は靴を履くことに集中させよう。僕なら行けるはずだ。さぁ始めよう。

2/24/2025, 3:38:15 PM

平べったい皿のような荒地に、一輪の花が咲いていた。
僕はそれを見ると、その花弁について考えた。花も葉の変態系と最初に唱えたのはゲーテで、その証明は200年越しにされることになった。物質の最小単位を唱えたのは2000年前ものギリシャの哲学者だった。結局のところ、真理に衰えはないし、人の知能は時間性とは別のところにあるということだ。

2/23/2025, 3:31:30 PM

誰しも一度は「魔法があれば」と考えたことがあるだろう。手に負えない苦境、実現困難な夢想、純然なファンタジーへの憧れ。理由は多様にあれど、結局のところは現状変革への強い欲求である。かく言う私も、学生の頃は他の追随を許さない程に魔法への妄想に耽っていた。魔法の妄想と言っても、一様では無く、色々なやり方がある。私は主に1.魔法が当たり前にある世界への転生2.現実世界に魔法が普及する展開の2.方向で妄想を試みていた。さらには、どんな魔法があり、それがどんな原理で動くものかなんてのも事細かに考えていたものである。今思えば、その論理は若人の柔肌のように脆いものなのだが、当時の私はその欠陥だらけの世界に身を置けていたのである。学校を出て、社会に入り、今ではそんな気力すらも湧いてこない。頭を捻って出てくるのは、上司への呪詛ぐらいなものだ。20代を過ぎていくと、我々はタダでは歳を跨げなくなっていき、毎年何かしらを時間に捧げないといけないんだ。そう考えると、若さというのはそれだけで魔法のようなものだったのかもしれない。

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