浜辺 渚

Open App

誰しも一度は「魔法があれば」と考えたことがあるだろう。手に負えない苦境、実現困難な夢想、純然なファンタジーへの憧れ。理由は多様にあれど、結局のところは現状変革への強い欲求である。かく言う私も、学生の頃は他の追随を許さない程に魔法への妄想に耽っていた。魔法の妄想と言っても、一様では無く、色々なやり方がある。私は主に1.魔法が当たり前にある世界への転生2.現実世界に魔法が普及する展開の2.方向で妄想を試みていた。さらには、どんな魔法があり、それがどんな原理で動くものかなんてのも事細かに考えていたものである。今思えば、その論理は若人の柔肌のように脆いものなのだが、当時の私はその欠陥だらけの世界に身を置けていたのである。学校を出て、社会に入り、今ではそんな気力すらも湧いてこない。頭を捻って出てくるのは、上司への呪詛ぐらいなものだ。20代を過ぎていくと、我々はタダでは歳を跨げなくなっていき、毎年何かしらを時間に捧げないといけないんだ。そう考えると、若さというのはそれだけで魔法のようなものだったのかもしれない。

2/23/2025, 3:31:30 PM