タイムマシーンなんて、いらない!!
だって、過去も未来も自由に行き来出来たら、つまらないじゃない。
あたしは、『今』を思いっきり楽しみたい!!
過去なんて作り変えようとしなくていい、
未来なんて見通せなくてもいい、
何が起こるのか分からない『今』を生きる方が、冒険みたいで、絶対楽しいと思うの!
――だから、あたしは!
〜タイムマシーン〜
今宵は月が綺麗ですね。
なんて言ったら、彼はどんな反応をするのだろう。
照れるのかな。それでも普通に綺麗だねって返すのかな。
自分は、圧倒的後者だと思う。彼、すごく天然だもの。真の意味なんて、きっと理解できない。
ねぇ、愛しのテディベア。
そんな『彼』をぎゅっと抱きしめる。
今日、私は大好きな人を亡くした。
しかも、自分の手で。
……だって、彼が悪いんだよ?
他の人のところに行っちゃうから。
このテディベアは、私から彼へ送ったものだ。
きちんと大切に保管してくれてたんだろう。
だが、今は返り血が飛んで、所々に水玉ができている。
自分ももう、長くはないな。
なんて思いながら、人生初の赤ワインを口内で転がしていた。
〜特別な夜〜
――誰かが、呼んでいる。
いや、『叫んでいる』の方が正しいのか。
えっ、どうして私を浮き上がらせるんだい?
海の魚さん。
私を餌にしてくれてもいいのに。
あっ、そうか。
私は汚くて醜いから、食べたくもないよね、そんな肉塊。
私は『必要とされていない人間』だから、海の底に身を隠そうとしたただけだよ。
なのにどうして。
私の体は、勝手に、上へ上へと浮かんでゆく。
嗚呼、何故……
私はあの太陽に手を伸ばしているのだろうか。
見たくないくらい輝いて、眩しくて、嫌なのに。
〜海の底〜
「あっ、また来た。メッセージボトル」
ひとり、ゆったりと海岸沿いを歩いている時、私は見つけた。それを拾い上げ、服の裾で軽く拭く。中には、くるくるに巻かれた手紙と、花の種。
わあ、今回はなんの花の種だろう。そして手紙……今日はどんなことが書いてるのかな。家に帰ったら書こう。
『あ、また流れてきた。メッセージボトル』
ひとり、海岸沿いを走っている時、僕は見つけた。それを拾い上げ、片手で掲げる。中には、くるくる丸められた手紙と、花の種。
よし、今回も僕の庭に植えよう。手紙は後で書くとするか……
“――あぁ、早く君に会いたい”
〜君に会いたくて〜
この日記は、昔、姉が書いていた。
だが、どこのページもボロボロ。
達筆で、綺麗な文字。
喜怒哀楽の感情が綴られた内容。
そして、一番の最後のページ。
この日記の最後の言葉。
『私は、自分の記憶を一生手放さないようにするために、抱きかかえたまま、燃え盛る炎の中で人生を終えます』
火事が起きた日。
姉以外はみんな避難することが出来たが、姉はこの日記を書き切るために、逃げ遅れてしまった。
落ち着いた後、自分たちの家へ訪れた。
そこには姉が愛していた日記帳が変わり果てた姿で見つかった。
――姉は今、どうしているだろう。
あの日までの記憶が閉ざされた日記帳を、自分も抱きかかえた。
〜閉ざされた日記〜