田中ボルケーノ

Open App
1/29/2025, 2:12:54 PM

こんな私も昔は陽向に憧れを持っていた

日陰は嫌だ、なぜ人は陽の当たる場所を目指さず
日陰を歩きたがるんだろう、と

でも私もいつの間にか陽向を諦め

日陰と思う道に迷い込む


歳を重ねると段々と気づくことがある

眩しいと思っていたのは

似非の太陽だったのかもしれない

今でもその場所は眩しいんだけれど

照らされた場所、影に見える場所

陰と陽を区切るのは

いつでも他人である、と


日陰と思っていた道を歩きながら

私は光を手にしている


この光を

輝かせ続けるのか

それとも暗闇に葬るのか

決断するのは自分であって

まさに今、私の袂を照らしている


誰も照らせない場所の

光の存在に

私もようやく気づいたんだ


               日陰

1/28/2025, 12:15:54 PM

オレンジの刺繍で

GとYが重なった帽子をかぶり

阪神甲子園球場の

一塁側へ

いざ参る


           帽子かぶって

1/27/2025, 3:49:02 PM

今まで誰にも言えずに
黙っていたことがある

ルンバが欲しい

お掃除ロボット

クルクル回って
寡黙にお掃除してくれるなんて
なんて愛らしいんだろう

家に欲しい
家族にしたい

でも、ネットを見てたら
誹謗中傷、とまではいかないけど
不満の声が聞こえてきて

やっぱり迷う

今日、ジャパネットたかたで
キャンペーンをやっているのを知った

ビシビシと購買意欲を刺激される

調べたら同じ型がビックカメラでも同じ様な金額だった

ここまでの僕の行動を
整理して考えると
お掃除ロボットは欲しい
けど、やっぱりそこそこ値段がする
その分購入した時にこの期待を裏切られるのが嫌なんだ、と思う

だから
僕はその一歩を踏み出すべきか
迷っているんだろう

           
           小さな勇気

1/25/2025, 1:48:54 PM

ふぅ、と息を吐き
両の足をしっかりと着接すると
緊張の面持ちで盤面を見つめる

一週間の努力の成果がデジタルで表示された

81.7

右手を握りしめ
無言でガッツポーズを決める

スコア -1.3

やっぱりだ、予感がしていた
今回の方法は間違いないと信じていた

これを続ければ60㎏代も夢じゃないんじゃなかろうか

と、思い始めたところで自分を制す
おいおい、先走りすぎだぞ
何回失敗してきたんだよお前は
まだ序盤、気を緩めるな、継続は力なり


そして一週間後

ふぅ、と息を吐き出す
両足を乗せデジタルを確認した時
私の自信は確信へと変わる

80.2
スコア -1.5

無言で小躍りする

前回よりスコアが良い

これは見えた
70㎏代まで残り僅か0.3
夢に見た60㎏代も射程に捉える

私は間違っていなかった
後は波に乗るだけ


さらに一週間後

成果というのはプロセスの積み重ねである

何も恐れる事はない
堂々と両足を乗せる

84.0
スコア +3.8

きっと何かの間違いである

一旦設定をクリアし
もう一度乗る

84.1
スコア +3.9

なんでさっきより増えてるんだよ
体重計を睨みつける

どうやら今回のダイエットも失敗の様だ

だけど私は諦めない
いつの日か
あの頃の体型を取り戻すまで


           終わらない物語

1/24/2025, 4:13:03 PM

新年会の二次会に
どうにも取り扱いに困るヤツが混じっている

斎藤

一次会がそろそろお開きのタイミングで皆をカラオケに誘ったのは斎藤であった

どうしても聞かせたい歌がある、とのことで
酒の勢いと興味が混じり仲の良い同僚五人で二次会にいくことにした

入室してすぐ、雰囲気的にドリンクを頼むタイミングで斎藤は早くも選曲に入る

画面に映し出されたのは
相川七瀬

え、斎藤が相川七瀬?
イントロのロックチューンに合わせて場が盛り上がる

突如始まった相川七瀬は職場での斎藤とリンクしない

斎藤×相川

一体これどうなっちゃうんだ、という期待で室内は溢れかえる

ドリンクは後回しだ
タンバリンと手拍子の中、皆の期待を一身に背負い、斎藤は自信満々にマイクを取ると

大声で歌い始めた

ところがイントロまで盛り上がっていた面々は、斎藤の異常性を直ぐさま感知する


声が異様に高い

ステンレスにノコギリを当てて全力でギコギコ裁断している様な歌声

まだAメロだが一気に酔いが覚める

歌声が耳に入るたび
本能が信号を出す
これは危険だ、と

サビにかかり
斎藤はもう一段、ギアをあげた

いよいよ脳が拒絶する
カラス避けに使えそうな周波数

熱唱

4分間

耐えに耐え

斎藤は最後

夢みる少女じゃいられない、と絶叫していた

歌が終わると斎藤はマイクを握りしめ
満面の笑みを浮かべている

恐らく宴へ参加した後悔と
彼の情熱と僕らの拒絶との狭間で
反応しないわけにもいかず

なぜだか僕らは
拍手をした


            優しい嘘

Next