なんで世の中の雑音まで感じないといけなくなってんのかな
アンテナビンビンにおっ立てててたら
会ったこともない人達が
あたかも不幸に合ったと感じてしまう
アイツが悪いとか
アイツのせいだとか
でもさ、誰だよそれw
そんなもん知らねえよ
野菜が高いのが目下の課題で
キャベツは高いからスルーしたけど
白ネギで迷う
白ネギは好きだから
すぐ使うし半額のにするか
でも、半額じゃない方が断然活きが良さそうだ
瞳をとじて
未来を描く
この選択が私にもたらす未来を
想像し
私は決めた
ひとつを選び
籠に入れる
瞳をとじて
え?なんて?
聞き馴染みのない言葉に思わずタメ口で聞き返してしまった
あ、すみません、もう一回お願いします
と言い直すと、渋々教えてくれた
一回で聞き取れよ、といった態度で
彼女が欲しいのは、ほうらいのたまのえだ、だそうだ
なんだよそれ、聞いたことねえぞ、そんなもん、と思いつつも
とりあえず、探さないことには始まらないし言葉を分解して考えてみる
ニュアンスから多分、ホウライの玉の枝、なんだろうな
ホウライってとこにある玉から枝が生えてる雰囲気だ
でもこのヒントだけで手探り捜索は正直しんどいわ
いくらこっちが一目惚れした側とはいえ、男五人並べて私の欲しいもん見つけたら結婚してあげる、てのはなんか、あんまりやろ
そして聞き返した時に渋々応えてたあの態度
なんか思い出したら段々ムカついてきた
いくら美人つったってあんな態度は良くないよな、こっちからわざわざ出向いてんのに
しかも籠の中にいたし、本当に美人かもよくわかんなかったし
竹から生まれたとか噂あるけど、俺、もしかして騙されてんじゃねえかな
あのジジイもなんか胡散臭いし、なあにが竹取の翁だよ、
直訳したらただの竹刈りジジイじゃねえかよ、偉そうにしやがって
もういいや、ヤメだヤメ
帰ろ
そんなことも朧気に忘れかけた頃
ニュースが入った
あの時、同席した他の四人が
色んな事故に合い再起不能に陥ったらしい
震え
怒りによる震え
なんちゅう話だ
美人との結婚を餌にありもしない与太話を信じてひどい有様らしい
こうなったら
いても立ってもいられない
桜の木の枝を一本へし折り
屋敷へ乗り込む
人の気持ちを踏みにじりやがって
五人目の俺が
お前が欲しがった、ホウライの玉の枝をお見舞いしてやろうじゃないか
ごめんごめん、と翁が出てくる
あの女どこいった
と尋ねると
月に帰った
とか言うので
嘘つけジジイ
つって
思い切り桜の枝でシバいといた
ふざけやがって
あなたへの贈り物
こんなこともあろうかと
持ってきといて本当に良かった
備えあれば憂いナシ
今朝、出発前に見ていた目覚ましテレビで告げられる
本日は太陽フレアが燃え上がるそうです
影響でGPSが異常をきたすこともあるようです
女子アナウンサーが深刻そうに言っていた
なんだかわからないけど
目覚ましテレビから
今日は燃え上がりますと言われると
信憑性が増している気がして
念のために道具を用意することにした
初登頂を目指して出発した私は
どうしようもないトラブルに見舞われる
順風満帆に見えた富士登山
ところが、まさかの道中で、太陽フレア砲の影響か、スマホのGPSがイカれてしまった
慌てていると見知らぬ外国人に対応を迫られる
今すぐなにが原因かを教えなさい、とすごい剣幕でまくし立ててくるもんだから
原因を追求すべく仲間内で会合を開く、けど
わからない、今すぐ答えられない、第三者に聞いて欲しい、としか言えなくて
それを周りで聞いていた人達は呆れて、あれよあれよと降りていく
私はどうやら完全に降り口を見失ってしまったみたいだ
だが
こんなこともあろうかと
持ってきといて本当に良かった
備えあれば憂いナシ
使い方はわからないけれど
きっと多分、大丈夫
さあ、我が行く道を示しておくれよ
羅針盤
気づけば夕時
富士の裾野で陽が傾く
羅針盤
さすがにもう、うんざりだ
ドアノブに手をかける
今回ばかりはさすがにもう、うんざりゴメンの助である
さすがの俺も今回ばかりはもう、堪忍袋の緒が切れ太郎
こんなとこからはとっとこハム太郎で出て行ってやりますよ
今夜こそ、このドアを開けて決別をする
長いこと我慢してたんだ俺は
最初っから気づいてたんだよ
とっとと出て行くべきだった
今回ばかりは出て行きますよ
ここを出たら俺はもう戻らねえ
後から考え直したとか泣きついても知らねえぞ
本当に知らねえからな
ドアノブを回す
あばよ
ここから一歩を踏み出して
今日から俺は
明日に向かって歩く
でも、
なんで止めないんだよ
止めないと出て行くぞ
今回ばかりは本当に出て行くぞ
いいのか本当に出て行くぞ
ほら、早く声かけないとかわいいハム太郎が出て行くぞ
まだ間に合うぞ
早くしろよ、もう
俺はついにドアを開いて
明日に向かって歩き始めてしまった
でも、よく考えたけど
明日なんかいらなかったんだわ
自分で閉じたドアの前に座り込み
なんて謝ったら昨日に帰れるか
じっと考えている
明日に向かって歩く、でも
週末のイオンモールは賑やかだ
この冬を乗り切るには少し物足りなくて
防寒装備品を買い揃えると、
帰りが混み合う時間に差し掛かる前に撤収すると決めていた
お目当ての物が揃い、退散しようと出口へ向かう途中、催場ではイベントをやっているようだった
ふと見ると、特設の舞台を中心に1階フロアには人だかりができており
観覧できる2階、3階も人で溢れている
マイクを通してスピーカーから説明が聞こえる
もう一回言いますね、僕とじゃんけんであいこも負けも座って下さい、あいこもですよ
なんだろう?
マイクを持った司会者はテンションをあげ、
煽る
皆さん、さあいよいよ、いきますよ!準備はいいですかあ?!
参加している数百の観客はマイクに応え、拍手だの歓声だの、会場のボルテージは最高潮、待ってました!という雰囲気である
よくわからないけど、なんかスゴそうだ
じゃんけんなら時間がかかるわけでもないだろうし、何の不利益もない
群衆に混じり参加させてもらうことにした
用意はいいですか、いくぞー!!!
さいっしょはグー、
じゃあんけんポーン!
私はチョキを突き上げた
会場の響めきと共に司会者がまくし立てる
はい、僕がパーなので、チョキの人はそのまま、手をあげててね
グーとパーの人は座ってくださーい
おお、よし!勝った!
私はチョキを突き上げて次戦を待つ
会場からはため息と落胆の声
目の前の人だかりが次々と座っていく
1階の催場に集まった群衆がズラズラと、
狭いスペースに気を使いながら座り
なんだよ、マジかよ、とか残念な声が漏れ聞こえる
結構減ったのかもしれない
上を見上げると2階席もみんな座っている、3階席もよく見えないが座っているように見える
家族連れもカップルも
おじいさんも孫たちも
異変
フロアに集まるみんなが周りを見渡して、その異変に気づく
気づくとフロアに立っているのは
私だけであった
変な空気が流れる
司会者も、信じられない、といった表情を浮かべるだけで何も話さない
静まり返ったイオンモールで
数百人に見守られながら
私は
ただ一人
高らかに
チョキを突き上げ
震えている
ただ一人の君へ