週末のイオンモールは賑やかだ
この冬を乗り切るには少し物足りなくて
防寒装備品を買い揃えると、
帰りが混み合う時間に差し掛かる前に撤収すると決めていた
お目当ての物が揃い、退散しようと出口へ向かう途中、催場ではイベントをやっているようだった
ふと見ると、特設の舞台を中心に1階フロアには人だかりができており
観覧できる2階、3階も人で溢れている
マイクを通してスピーカーから説明が聞こえる
もう一回言いますね、僕とじゃんけんであいこも負けも座って下さい、あいこもですよ
なんだろう?
マイクを持った司会者はテンションをあげ、
煽る
皆さん、さあいよいよ、いきますよ!準備はいいですかあ?!
参加している数百の観客はマイクに応え、拍手だの歓声だの、会場のボルテージは最高潮、待ってました!という雰囲気である
よくわからないけど、なんかスゴそうだ
じゃんけんなら時間がかかるわけでもないだろうし、何の不利益もない
群衆に混じり参加させてもらうことにした
用意はいいですか、いくぞー!!!
さいっしょはグー、
じゃあんけんポーン!
私はチョキを突き上げた
会場の響めきと共に司会者がまくし立てる
はい、僕がパーなので、チョキの人はそのまま、手をあげててね
グーとパーの人は座ってくださーい
おお、よし!勝った!
私はチョキを突き上げて次戦を待つ
会場からはため息と落胆の声
目の前の人だかりが次々と座っていく
1階の催場に集まった群衆がズラズラと、
狭いスペースに気を使いながら座り
なんだよ、マジかよ、とか残念な声が漏れ聞こえる
結構減ったのかもしれない
上を見上げると2階席もみんな座っている、3階席もよく見えないが座っているように見える
家族連れもカップルも
おじいさんも孫たちも
異変
フロアに集まるみんなが周りを見渡して、その異変に気づく
気づくとフロアに立っているのは
私だけであった
変な空気が流れる
司会者も、信じられない、といった表情を浮かべるだけで何も話さない
静まり返ったイオンモールで
数百人に見守られながら
私は
ただ一人
高らかに
チョキを突き上げ
震えている
ただ一人の君へ
1/19/2025, 2:16:00 PM