新年会の二次会に
どうにも取り扱いに困るヤツが混じっている
斎藤
一次会がそろそろお開きのタイミングで皆をカラオケに誘ったのは斎藤であった
どうしても聞かせたい歌がある、とのことで
酒の勢いと興味が混じり仲の良い同僚五人で二次会にいくことにした
入室してすぐ、雰囲気的にドリンクを頼むタイミングで斎藤は早くも選曲に入る
画面に映し出されたのは
相川七瀬
え、斎藤が相川七瀬?
イントロのロックチューンに合わせて場が盛り上がる
突如始まった相川七瀬は職場での斎藤とリンクしない
斎藤×相川
一体これどうなっちゃうんだ、という期待で室内は溢れかえる
ドリンクは後回しだ
タンバリンと手拍子の中、皆の期待を一身に背負い、斎藤は自信満々にマイクを取ると
大声で歌い始めた
ところがイントロまで盛り上がっていた面々は、斎藤の異常性を直ぐさま感知する
声が異様に高い
ステンレスにノコギリを当てて全力でギコギコ裁断している様な歌声
まだAメロだが一気に酔いが覚める
歌声が耳に入るたび
本能が信号を出す
これは危険だ、と
サビにかかり
斎藤はもう一段、ギアをあげた
いよいよ脳が拒絶する
カラス避けに使えそうな周波数
熱唱
4分間
耐えに耐え
斎藤は最後
夢みる少女じゃいられない、と絶叫していた
歌が終わると斎藤はマイクを握りしめ
満面の笑みを浮かべている
恐らく宴へ参加した後悔と
彼の情熱と僕らの拒絶との狭間で
反応しないわけにもいかず
なぜだか僕らは
拍手をした
優しい嘘
1/24/2025, 4:13:03 PM