「あれのどこが良いの」 と。
僕の友人は戸惑ったように眉を顰めて言った。なんだかまるで、奇異なものを見るような眼差しだった。
誰かは彼を恐ろしいと言ったし、
誰かは彼を不気味と言った。
そっと距離を取る人達に手を振り返す度に、自分のなかの何かが削れていくような思いがした。
離れていく人達を見送る度に、「貴方達に分かるものか」と妙に誇らしくなる自分もいた。そのような高尚な気持ちでは無いというのに。
「気持ち悪い」
「生理的に無理」
「変って言われない?」
「そんなのに構ってないで合コンとか行かね?」
そんな言葉の棘をひとつひとつ抜いて、目を逸らした。
「周りにはあんまり受け入れられない美しさだもの。
仕方ないね………」
と無理矢理飲み込んで。
誰かは好奇心のまま彼に近づいて、やはり最後は目を逸らした。おっかなびっくりなその様に僕はいつも「見世物じゃないんだぞ!!!」と叫びだしたかった。
臆病だからしなかった。
でも、そんな目で見ないでよ。
だって、だって。
僕は、彼のことがとても好きなんだ。
ひんやりと冷たい肌も、
ジイとこちらを見つめ返す静謐な眼差しも。
時折、しゅるりと身を寄せてくれる気まぐれが、 僕にはたまらなく愛おしかった。
彼が、僕を怖がらずにいてくれることが嬉しかった。
許しを得た唯一の存在みたいに思えて。
今日も物言わぬ彼はこちらを見つめて、濡れたような月白の鱗を艶めかせ、腕の上に絡まるばかり。
「こんなに素敵な生き物なのに、ね。」
#恋物語
恋というものを未だに分かっておりません。色んな形の恋があって、そのなかにこのような2人…1人といっぴきさんがいても良いのではと。ご不快になられた方がいらっしゃったら申し訳ありません。
あれは私がまだ若く…青春、晩春とでも申せばよろしいかしらね。私、とっても遅い初恋をしたのよ。初恋なのかしら、とにかく、純粋で、憬れとも幼い独占欲ともつかない気持ちを抱いていたの。
彼女の品の良いオリーブのアイシャドウに、目尻にチョイ、と僅かに煌めくパールを見つけて1人、胸をときめかせておりました。
素敵、いつか真似しても良いかしら、と心の鍵付きのメモに留めておくのです、この魅力的なひとから学べることはとても多かったから。
目元と同じく、まじまじと見ないと気がつかない程度のお洒落とこだわりをたくさん仕込んでいる方でした。
コツコツと机の上を踊る指先は、夜直の森の色、その細い指先で一定のリズムを刻んでいました。ゆったりと刻まれるそれはメトロノームのようで、彼女の研究室でこの音を聞けるのが私の楽しみの1つであったのです。
彼女が古物商からまけて貰ったと、案外豪快に笑ってクシャリと顔を緩ませて………それがとってもかわゆく思えたの。
そう話していた紫檀の机の詰まった木の音は、コン、コンという柔らかく鈍い音を小さく響かせていてね、彼女は思考中、それもとびきり集中しているときだけこの音を出すんです、私はその音にこっそりと耳を傾ける時間が好きでした………
うつくしいあのひとが目を伏せて、
思考の海に浸っているのを。
彼女の指先へ、
世界が静かに収束していくようなその時間を。
私はいつまでも、いつまでも見つめていたかったのです。
あのひとは今、どうしているのかしらね。
私の耳の奥には、ずうっと、あの音がこびりついて離れないというのに。
#sweet memores
「なんでもは出来ないけど、とりあえず貴方にめいいっぱいの愛を届けることは出来るかな」
へちゃむくれの顔の僕の横で、君はえっと、とはにかみながら指折り数え出した。
短く切った爪の潔さが、僕は好きだ。
貴方が泣いているなら
お菓子とティッシュ箱抱えて飛んでいくし
貴方が笑っているなら
隣でそのポジションを死守したいし
困っているのなら、出来ることは大体やるつもり
本音を言うと、なんでもあげたいけど
お金は勘弁。お金が絡むと人間、面倒くさくなるから
「そもそも愛があるからって、お金持ちになれたり、スーパーマンになれたりはしないでしょう?」
「アンパンマンは?」
「論点をずらさないの」
でも、ほら。
深夜の長電話とか、
一緒に手を繋いだりとか、
美味しいものシェアハピしたりとかって、
愛がないとできないよ。
だから多分『愛があれば何でもできる』じゃなくて
愛があるから出来ないことだらけでも、 もう少し頑張れる
ちょっとだけ貴方の日常をマシにできる、みたいな。
そんなふうになりたいです
「パセリ的な…?」
「彩り的なね」
うん、と頷き返される。
パセリ。ふーん、パセリかぁ
「どう?」
「僕もそうなりたいです」
「愛じゃん」
「まぁ…このくらいなら出来るし」
「あは、お互い努力、ですな」
#愛があれば何でもできる?
お題を見て、「かわいいだけじゃだめですか?」のフレーズを思い出してしまったのだけれど、先日国語の先生は駄目です、と言い切っていたので多分これもニコニコしながら駄目ですねぇ、と言う気がします
休み時間に食パンマン(12枚切りver.)を描く先生です
ふんやり宙を行く、手放されたいつかの風船だとか、
ふうと想いを託した秘密の紙飛行機だとか、
安息の地を目指して旅をする、タンポポの綿毛とか。
そんな姿勢を見習って追い風向かい風に身をまかせ、
お小言を右から左へ聞き流してはぶつくさ言われ、
やることに追われないようにそこそこ手を抜き、
楽しいことに釣られてあちらへこちらへフラフラと。
そんな風に、
のらりくらりと日々をやり過ごしてゆきたい所存。
#風に身をまかせ