「一年後、ボカァ死ぬんです」
唐突に。
お前は赤らんだトロンとした目で、なんでもないことみたいに……なんならちょっと陽気な感じでフニャフニャ言っててさ。呂律も回ってないしお前が話しかけてんのは僕じゃなくて日めくりカレンダーだよって。しっかりしろよって笑。
だから、僕はアアこいつ酔っぱらてんだなぁと思ってコップに水を注いでやったの。で、マ冗談だろうなと思って
「死なれるのは困るなぁ」
って返したんだよ。
そもそも週末は一緒に映画見に行く約束してたし、年末はお前ん家で親戚のおチビ達と遊んで年越しするだろ?それに大学卒業したら海外…とまでは行かないけど、どっか旅行行くって話してたじゃん。僕お台場のでっかいガンダム見たいんだよな。
ア、てかまだノート借りる代わりにジュース驕ってくれるってやつ忘れてないから。貸し3つくらいあるし。
で、そんなことを指折り数えて困るなぁって。そしたらお前ボロボロ泣き出してさぁ、
「困るのはやだなぁ~」
つって。お前泣き上戸の才能あるんじゃないの。しっかり缶ビール握りしめて離さないわ泣き疲れたのか急に寝るわ。あれは肝が冷えた。ドタン!って頭から机につっぷしてさ。あそこから布団の上まで運んでった僕に感謝してよね。
「てのが昨日の1年後爆弾発言事件の顛末なんだけど」
「それは…とんだ醜態を……ごめん」
「ン。で1年後は?大丈夫なん?」
「え、あぁ、うんまぁ、なんでそんなこと言ったの僕」
「知らん、酔っぱらいの戯れ言?」
「……というか君、困るんだぁ、ふへ」
「困るよ、当たり前だろ」
「君のそういうところがいけないと思う」
「は?」
「いや、えっと、とにかくありがとう」
「別に。何年一緒にいると思ってんのバーカ」
#一年後
希望に満ちていることが約束されたネバーランド。
眠れば楽しい夢を見て、
サンタさんをワクワク待って、
荒唐無稽な話を信じるほどには純粋で、
少しだけ残酷で、無垢な僕ら。
じゃんけんで戦争は終わればケンカしたって仲直り。
大きくなって、背が伸びて。
変わりゆく環境にあちらこちらへフラフラしたり。
初恋の香りと成長の気配に怯えていたり。
ずっとこのままでいたいのに、
ずっとこのままでいたいけど、……でも、
ネバーランドの住人でいるには少し、
現実を知りすぎてしまったから。
努力が必ず報われるわけでもないし、
善人が必ず幸せになれるわけでもないってこと。
感情がすれ違って
いつの間にか失っていたり、
抱え込んでしまったりすること。
この世はどうも不確かで、
楽しいだけじゃ、正しいだけじゃ生きられないってこと。
せめて、君の前ではあの日のままでいたい。
#子供のままで
愛を叫ぶには、どうにも僕は年を取り過ぎてしまったよ。
やぁ、恥ずかしいな。
そうだな……じゃあ花を買いに行こうか、
君の好きな白い花でさ、
仕舞いっぱなしのガラス瓶にでも飾ればいいよ。
気取ってなくて僕ららしいもの、
……ほら、捨てなくて良かっただろ。
ついでに君の好きなケーキを買おう。
シュークリームも明日のおやつに買っていこうか、
たまには良いでしょ?僕はあのお店のが一等好きなんだ。
なんて、頬を掻きながら照れくさそうにはにかむ貴方が
私は愛しくて仕方がないのよね。
#愛を叫ぶ。
手の中に閉じ込めて、
羽を掴んで、
鱗粉を手にくっつけてニコニコしている
キャラクターもののカラフルなティッシュに
包まれた残骸が虚しくて
無邪気な子供が捕まえた、美しいそれを
僕はサラサラと砂に埋めた
ザラザラの素肌だけが、夜の水面のよう
#モンシロチョウ
いちねんまえ、
ぼくはずっと家にいました
動かない体にインスタントな刺激を流し込んで
ベッドの上で天井を眺めるか
ブルーライトの光を浴びるかしていました
お医者さんには太陽光を浴びろと言われていたのに
痩せて、太って、また痩せて
今年はなんとか社会で生きています
元気です
#一年前