ナナシ

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「あれのどこが良いの」 と。
僕の友人は戸惑ったように眉を顰めて言った。なんだかまるで、奇異なものを見るような眼差しだった。

誰かは彼を恐ろしいと言ったし、
誰かは彼を不気味と言った。
そっと距離を取る人達に手を振り返す度に、自分のなかの何かが削れていくような思いがした。
離れていく人達を見送る度に、「貴方達に分かるものか」と妙に誇らしくなる自分もいた。そのような高尚な気持ちでは無いというのに。

「気持ち悪い」
「生理的に無理」
「変って言われない?」
「そんなのに構ってないで合コンとか行かね?」

そんな言葉の棘をひとつひとつ抜いて、目を逸らした。

「周りにはあんまり受け入れられない美しさだもの。
仕方ないね………」

と無理矢理飲み込んで。

誰かは好奇心のまま彼に近づいて、やはり最後は目を逸らした。おっかなびっくりなその様に僕はいつも「見世物じゃないんだぞ!!!」と叫びだしたかった。
臆病だからしなかった。

でも、そんな目で見ないでよ。
だって、だって。
僕は、彼のことがとても好きなんだ。

ひんやりと冷たい肌も、
ジイとこちらを見つめ返す静謐な眼差しも。
時折、しゅるりと身を寄せてくれる気まぐれが、 僕にはたまらなく愛おしかった。
彼が、僕を怖がらずにいてくれることが嬉しかった。
許しを得た唯一の存在みたいに思えて。


今日も物言わぬ彼はこちらを見つめて、濡れたような月白の鱗を艶めかせ、腕の上に絡まるばかり。

「こんなに素敵な生き物なのに、ね。」





#恋物語
恋というものを未だに分かっておりません。色んな形の恋があって、そのなかにこのような2人…1人といっぴきさんがいても良いのではと。ご不快になられた方がいらっしゃったら申し訳ありません。

5/18/2026, 10:14:35 AM