2/10/2024, 3:52:29 PM
誰もがみんな、あなたを愛してくれたらいいのにな。
わたしのちっぽけな愛なんて必要なくなるくらいに。
わたしの手を離れて、遠く遠くまで行けるように。
優しさと慈しみに揺られて、穏やかに眠れるように。
ただ、忘れないでくれたらいい。
そのひとつめの愛が、わたしのものだったことを。
#誰もがみんな
2/9/2024, 3:48:11 PM
あなたが慈しんだのは、白。
ぱっと華やかな赤よりも、つややかに深い青よりも。
あなたの心の深くに根ざして、やがて咲いた色。
いつかなにもかも思い出になっても、忘れはしない。
かすみ草の花束を抱えた、あの日のあなたのことを。
#花束
2/8/2024, 4:03:43 PM
ほとんど、目だけで笑うひとだった。
くちびるの端は、かすかにひきつるようだった。
笑うのが下手で困るのだと言っていた。
でも、あのひとの瞳はあんなに柔らかく光っていた。
明け方に融けてゆく雪のように静かで、優しかった。
あのひとの、そんな笑いかたが好きだった。
その目を覗き込む相手にだけわかるものがあった。
わたしはそれを知っていた。
そして、きっと忘れない。ずっと。
#スマイル
2/7/2024, 3:29:27 PM
あなたが好きだった歌を歌うとき、踏み外す一音。
あの秋の水溜りに立って頬に感じた風の色。
空気を引っ掻くように掠れた笑いかた。
差し出されたフォークの先にあったケーキの味。
誰にも教えなかった恋。
一度も口にしなかった、とっておきの愛の言葉。
#どこにも書けないこと
2/6/2024, 3:26:48 PM
さよならを刻んで、明日が来る。
おやすみを刻んで、夢を見る。
刻まれる一秒を見送って、見送って。
そうして胸の内側に刻まれたものを、思い出と呼ぶ。
わたしだけの傷跡を、生きていく。
#時計の針