やさか

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2/7/2024, 3:29:27 PM

 あなたが好きだった歌を歌うとき、踏み外す一音。
 あの秋の水溜りに立って頬に感じた風の色。
 空気を引っ掻くように掠れた笑いかた。
 差し出されたフォークの先にあったケーキの味。
 誰にも教えなかった恋。
 一度も口にしなかった、とっておきの愛の言葉。


 #どこにも書けないこと

2/6/2024, 3:26:48 PM

 さよならを刻んで、明日が来る。
 おやすみを刻んで、夢を見る。
 刻まれる一秒を見送って、見送って。
 そうして胸の内側に刻まれたものを、思い出と呼ぶ。
 わたしだけの傷跡を、生きていく。


 #時計の針

2/5/2024, 2:28:34 PM

 溢れたら、溢れたぶんだけ失くしてしまうと思った。
 わたしの外側に零れ落ちて、消えてしまうと思った。
 どれだけ大事にしていても、そうなると信じていた。
 ひと雫だって忘れたくなかった。
 これはわたしのものだ。わたしだけのものだ。
 そうして抱えて生きてきた。
 ぴんと張り詰めた水面、美しく濁ったわたしの心。
 そして、今。
 そこに触れようとするあなたの指を、予感している。
 初めて何かが壊れるだろうときを、待っている。
 どうしてか。どうしてか。


 #溢れる気持ち

2/2/2024, 4:51:16 PM

 あのひとのまなざしは、お祈りを捧げるようだった。
 青い綺麗な花びらに、じっと何かを託すようだった。
 わたしは何も聞かなかった。
 乾いた白い頬と、軽く伏せられた睫毛を見ていた。
 凛と引き結んだくちびるが震えていた。
 言葉はなかった。
 世界で一番美しくて悲しい、一枚の絵のようだった。


 #勿忘草

5/19/2023, 12:13:49 PM

 わたしだけが知らなかった。
 お別れがどれほど辛く悲しいものか、切ないものか。
 わたしだけが知らなかった。
 あなたの命に、ここまで、と線が引かれていたこと。
 わたしだけが知らなかった。
 あなたがその線を、ずっと見つめて生きていたこと。
 わたしだけが知らなかった。
 わたしだけが知らなかった。
 わたしだけが知らなかった。
 あなたがどれだけ、わたしを愛してくれていたのか。


 #突然の別れ

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